アマゾンの2019年第2四半期の決算発表はありました。結果はややイマイチでした。
売上は良かったものの、利益が事前予想に届来ませんでした。商品の配送コストが高くついたことが、利益を圧迫していたようです。アマゾンの株は時間外取引で3%弱の下落をしています。
- 売上:前年同期比+19.8%増の634億400万ドル。アナリスト予想625億ドルを上回る
- 1株あたりの利益:5.22ドル。アナリスト予想5.56ドルを下回る。
1dayデリバリーサービスの影響が色濃く出た決算
さて、今期のアマゾンについてですが、良くも悪くも米国で行ったPrime会員向けに実施した無料の配送サービス「1dayデリバリー(翌日配送)」の影響を受けています。
背景として、ライバルのウォールマートがネットで買った商品を無料で2日以内に届けるサービスを行っていますが、アマゾンはこれに対抗して米国で翌日配送の「1dayデリバリー」サービスをPrime会員向けの標準サービスとしました。
ジェフ・ベゾスCEO決算発表の場で発言している通り、1dayデリバリーのおかげで、売上高は前四半期の16.8%成長から19.8%へと成長速度が加速しています。これが、アマゾンが売上予想を上回った要因です。
しかし、「1dayデリバリー」サービスの拡充などで8億ドルを費やしてしまい、これが利益を押し下げる要因の1つになっています。
注目のクラウド・サブスクリプション・広告などのビジネスは揃って37%成長
アマゾンのビジネスの中で、私が注目しているものが3つあります。
クラウドのAWS、サブスクリプションビジネス(Amazon Prime会員等)、それに広告ビジネスです。まだ3分野合計でアマゾンの売上高の25%にしか満たないですが、今後のアマゾンを担う成長分野だと思っています。
そして、今期の売上成長率は3つの分野で全て一律に+37%でした。まずますの成長率ですが、クラウドについてだけは、この成長率ではやや物足りない印象があります。
前四半期のAWSの売上成長率は+41%でしたが、これから更に鈍化しているからです。
売上 | 前年同期比 | |
---|---|---|
オンラインストア | 310.53億ドル | 14% |
実店舗 | 43.30億ドル | 0.4% |
マーケットプレイス | 119.62億ドル | 23% |
サブスクリプション | 46.76億ドル | 37% |
AWS | 83.81億ドル | 37% |
その他(広告収益を含む) | 30.02億ドル | 37% |
合計 | 634億ドル | 19.8% |
クラウドAWS減速の要因
またクラウドに関して注目すべきは、2019年第1四半期(1Q)のクラウドの市場全体の成長率がAWSと同じ41%だったことです。つまりAWSは2019年1Qで市場の拡大と同じスピードでしか成長していなかったことがわかっています。
2019年1Qのクラウド市場についてはこちらを参照:Chasing Pack Gain Market Share in Q1 but Amazon Maintains a Clear Lead(Synergy)
そして、2019年2QではAWSの売上成長速度は41%から37%へと更に減速しました。恐らく、これで市場平均よりも下回る成長速度になったと思われます。
AWSの減速は2つの要因があると思います。
(1)AWSは既に2位のMicrosoftのAzureを大きく引き離していることから、成長の余地が他のクラウドに比べて小さいこと、また(2)近年は既にAWSを導入した企業がAWSの障害に備えてもう1社契約するマルチクラウド化の動きがあるためです。
ある程度の成長の減速は仕方ないですが、できたら市場の拡大するスピードよりかは売上成長が上回ってほしいものです。
ちなみに、「クラウドのシェアはAzureが1位でAWSが2位」と思っている方が、かなりの数いますが、それは違います。
以下の図は、クラウドのシェアと成長率を表しています。右に行くほどシェアが高いのですが、AWSが一番右に位置していてシェアが最も高いのが解ります。
この記事ではクラウドのことを、ずっと「コンピュータの計算能力を提供するサービス(IaaS)」として話ししてきましたが、この意味でのクラウドは2019年7月現在でもアマゾンのAWSが、MicrosoftのAzureを圧倒的に上回っています。