昨日はブログで書いたように、今の米国株はAIブームに乗った半導体銘柄が牽引して上昇しています。
しかし、私は今のAIブームは遠くない将来に終わると思っています。その理由について書いていきます。
この記事のポイント
- AIの進化は「モデルの進化」と「コンピュータの計算能力の向上」の両輪が揃ってはじめて訪れる。
- 今のAIブームは2017年のモデルの進化から起こっているが、人々の生活を劇的に変えるものではない。
- 次の劇的なモデルの進化までは10年から数十年かかるが、投資家は気が移ろいやすく10年どころか数年も熱狂は続かない。
今のAIブームについて
最近では、「AIは本物だ」とか「昨今のAIの発展は長期トレンドの始まりにすぎない」という話をよく聞きます。
恐らくそれらの言葉は20年や30年の期間で考えた時には真実になると思います。
しかし、だからAIのための半導体を提供する企業の株価が右肩上がりに上昇するというのは、違う気がしています。
その理由を、AIの進化に必要な(1)モデル(手法)の進化と(2)コンピュータの進化の側面から考えていきたいと思います。
AIの進化
人間が行っている判断などのコンピュータで変わりに行う手法(モデル)の研修の歴史はかなり古く、1950年代くらいから始まっています。
しかし、新しいモデルが考案されたからと言って、すぐに賢いAIができるわけではありません。こうしたモデルが世の中に生まれても実行するコンピュータの性能が乏しければ、机上の空論になってしまい世の中で日の目を見ることはありません。
つまり、人工知能は(1)モデルの進化と(2)大量の計算ができるコンピュータの進化の両輪が揃わないと発展しません。
かつて人口知能は1950年代、1980年代にもブームになりましたが、いずれもモデルの行き詰まりかコンピュータの計算能力の限界がネックになってブームは終わっています。
問題はAIモデルの進化のスピード
さて、今のAIブームで問題なのはAIのモデルの進化というものが、10年(時に数十年)経たないと画期的なものが出てこないことです。
- (1)モデルの進化:劇的な進化は10年から数十年に1度
- (2)コンピュータの計算能力の進化:年々少しずつ改善
たとえば、2006年に発表されたモデルの進化(ディープラーニング)が起こって翻訳や文字起こしの精度が劇的に改善し、それから10年以上経過した2017年にGoogleの研究者が発表したトランスフォーマーという新たなモデルを元にしてChatGPTなどの今のAIブームが起こっています。
2017年にモデルは誕生した、今はそれを活用して何がどこまでできるか世界中で実験しようという段階なのです。
そしてNVIDIAなどの半導体企業にとって都合が良かったのは、今回もAIのモデルは大量な計算が必要なので大量の計算のための半導体需要が生まれたことです。
こうして、昨今の半導体銘柄の急騰が起こりました。
今のAIブームは遠くない未来に終わる
しかし、今回のAIは私はまだ本物ではないと思います。
もしも、本物の技術ならどうしてChatGPTを数回だけ使ってみて、その後触らなくなってしまうユーザがこんなにも多いのでしょうか。スマホと同じ頻度や時間でChatGPTに触れているユーザはどれだけいるでしょうか。
ChatGPTから離れたユーザには「期待していたほどの人工知能ではない」ことが直感的にわかってしまったのだと思います。
人工知能のモデルの改良は日々研究が行われていますし、また、大量のコンピュータ(大量のNVIDIA)を使うことで人工知能の学習回数を増やして、より賢いものを生み出す努力はされています。
しかし、それだけでは十分ではない根本のAIのモデルの進化がまだまだ何回か必要な気がしています。
私もかつて学生時代に人工知能のモデルの研究をしていましたが、世界中の研究者がどんなに頑張ってもAIの性能で劇的な進化が起こるのは10年から数十年に1度です。
その間、気が変わりやすい投資家がそんなに長いこと半導体銘柄を買い続けることができるでしょうか。
だから、20-30年後にはAIがもっと普及していることは疑いませんが、半導体銘柄はしばらく上昇したあとに大きな下落が訪れるだろうとも思っています。