FOMCが終わってから、さまざまな資産がいつも以上に売られているようにみえます。
ただ、この金融引締めはまだ始まったばかりなので、この動きはこれからもしばらく続くかもしれません。
FOMC後の価格の変動がそのまま何ヶ月も続くかどうかはわかりませんが、何かしらの傾向があるかも知れないと思い、記録を残す意味でもFOMC後の数日の価格の変化を追いかけてみたいと思います。
この記事のポイント
- FOMC後の5月5日と5月6日の値動きから、投資家はインフレの長期化を警戒しているように見える。
- インフレに最も弱い国債は長期なものほど大きく売られた。
- 下げ相場の中でも、石油株・ゴールド・コモディティは耐えた。長期国債利回り(長期金利)上昇の悪影響を受けやすいハイテク株は売られた他、資金が抜けやすい小型株・新興国株・ビットコインは大きく売られた。
FOMC後の価格の変化
まず、株式投資家が普段から見慣れている米国株の株価指数の動きを見ていきたいと思います。
米国株の株価指数はFOMC直後の5月4日には上昇しましたが、その後5月5日と5月6日は下げました。
「FOMCの影響を受けた値動きはFOMC終了の20時間後から本格的に始まる」という話も小耳にはさんだので、FOMC直後は含まずに下げた5月5日と5月6日で有名な4つの株式市場の値動きを見てみます。
金融引締めが始まって、影響が受けやすいハイテク企業、資金が抜けやすい小型株が売られた形になっています。こちらは多くの投資家の想像通りの結果だったと思います。
この流れが続くと考えた場合のアイディアの一つとしては、ハイテク株か小型株を多く含む株が下がることに投資するという方法がありそうです。
セクター毎の株価の値動き
次に、業界ごとにFOMC後の株価の値動きを見ていきます。
こちらで私は注目したのは、やはり石油業界株の上昇です。
この記事の後半でも触れますが、インフレを抑えるための金融政策(政策金利引き上げや量的引締め)を発表したのに石油株が上昇しているということを見ると、投資家は「FRBの政策ではインフレを抑えるには不十分だ」と考えているようです。
もう一点私が気になったのは、次に2日間で成績が良かったのが「公共セクター」の株だったことです。
この業界が調子が良いときというのは、景気が終盤に差しかかったときで、シンプルに言うと景気が悪いほうに向かって減速するタイミングです。経済指標を見る限りは今のアメリカの景気はまだ強いと言えますが、先を織り込む投資家たちは既に景気の減速にそなえているように見えます。
>>失業率から景気後退の兆しはまだ見られない【22年4月雇用統計】
今がまだ買いなのかは私にはわからないので、私は石油株や公共株には手を出していませんが、買いポジションでチャンスがあるのはこういう限られたセクターなのだろうと思います。
国債の値動きからもインフレ懸念がにじむ
さて、私が面白いなと思ったのはここからです。
国債の値動きを見ていると、株式投資家よりもハッキリと債権投資家は今回のFOMCの金融政策をダメ出ししていると感じます。
グラフで見ると一目でわかるのですが、FOMC直後から年限の長い国債ほど大きく売られている傾向があります。
この動きの背景にはインフレの長期化の心配があるのだろうと思います。
長期国債ほどインフレの影響を受けるので、長期国債が大きく売られたという理解です。FOMCの結果を受けて、今の金融政策ではインフレが長引いてしまうと投資家が判断した可能性があります。
今回のFOMCの金融政策の何かまずかったかと言えば、パウエル議長が次回6月のFOMCで投資家が想定していた0.75%の利上げの可能性を排除して、それよりも低い利上げ幅を示唆したことです。
>>FRB、予想よりも緩やかな利上げ示唆。インフレ長期化リスク上昇か【22年5月FOMC】
この発言により、FRBのインフレ対応策に疑問視する見方が出た気がします。
FRBは早くもこの発言の火消しに追われているようで、リッチモンド連銀の総裁が0.75%の利上げに含みをもたせる話をしています。
>>リッチモンド連銀総裁、0.75ポイント利上げの排除望まず(ブルームバーグ)
FOMC後の2日間の市場は低調な値動きが続きましたが、週明けからこの流れが続くかどうかを見ていきたいと思います。
この流れが続くならインフレ懸念から長期米国債を中心に売られ、この悪影響を受けやすいハイテク株も売られ、資金が抜けやすい小型株や新興国株やビットコインなどの売りの流れが続くと思われます。
一方で、石油株や商品(コモディティ)とゴールドの価格はそこそこ手堅い値動きをするかもしれません。