アメリカではまだ新型コロナウイルスが猛威を奮っていますが、少しだけ新型コロナウイルス後の経済と、買うべき資産についても考えていきたいと思います。
新型コロナウイルス後の経済に大きな影響を与えるのは、アメリカ政府による1兆ドル超え(100兆円以上)の景気対策です。
1兆ドルと言いましたが、新型コロナウイルスの経済損失を抑えるのためには、最低2兆ドルは必要だという声もあり、最終的にはもっと大きな額になるかもしれません。
2兆ドルだったとしても、アメリカのGDPの10%分に相当する大きな金額です。正直言うとここまで、大規模な景気刺激策は記憶にありません。
この記事のポイント
- 新型コロナウイルスに対抗するための景気刺激策で、アメリカ政府は戦時中のような規模の支出が必要との声が出ている。
- 第二次世界大戦ではアメリカ政府が毎年GDP10-20%分の支出をして、アメリカの景気が回復、株が上昇気流にのった。
- 歴史が繰り返されるなら、新型コロナウイルスがピークをすぎれば、景気刺激策で株高が来る。
- 気をつけるべきは、景気の過熱とインフレ率の上昇。新型コロナウイルス後のインフレの恐れも考えると、株だけではなくインフレにも強い金や不動産投資信託REITなども、わずかに購入しておいたほうが良いかも知れない。
歴史を振り返ると、第二次世界大戦時の毎年のアメリカ政府の支出はGDPの10-20%分でした。今のアメリカの政府の景気対策の規模を見ていると、まるでウイルスと戦争をしているかのようです。
第二次世界大戦の時は、アメリカ政府の大きな支出が景気を支えてその後に株高の時代を呼び込みました。一方で、ベトナム戦争の巨額な支出は、インフレの時代を招いて、この時代の株は大きく低迷しています。
今回の政府の大型支出は、どちらに近いパターンになるのでしょうか。
景気刺激策で2兆ドルを求める声
まもなくアメリカでは1兆ドルを超える景気対策の法案が可決されようとしています。
しかし、トランプ大統領の側近で大統領補佐官のクドロー氏は、景気刺激策は1兆ドルではなく2兆ドル規模になるとも発言しています。
>>Kudlow says coronavirus relief package worth more than $2 trillion(CNBC)
世界最大のヘッジファンドを運用しているレイ・ダリオ氏も、新型コロナウイルスのアメリカ企業の経済損失は約5兆ドルになり、政府の景気対策は最低でも1.5-2兆ドル必要だと発言していました。
モルガン・スタンレーによれば、アメリカの4-6月の経済成長はマイナス30%と歴史的な低迷をすると見られているので、これをなんとか抑えるためには、政府の巨額な支出が必要なようです。
>>米GDP、第2四半期は30%のマイナス成長に-モルガン・スタンレー(ブルームバーグ)
第二次世界大戦時のアメリカ政府の支出
もしも2兆ドルの景気対策を実施するとなると、アメリカのGDPの10%分にもなります。
今から80年ほど前、第二次世界大戦にアメリカが参戦した時も、同じようにアメリカ政府がGDP10%を超える巨大な支出をしていた時代がありました。
以下のグラフで紫の棒グラフが政府の支出を表していますが、戦時中に膨れ上がっているのがわかります。
戦争前のアメリカは不況に苦しんでいましたが、政府が巨額の出費をして民間にお金を流したことで、株は上昇した歴史があります。

一方で、安全資産の国債は下落して、国債の利回りが上昇に転じました。
この歴史が繰り返されるなら、2020年も新型コロナウイルス収束後は株高・国債安になるはずです。
インフレで苦しんだ1970年代
しかし、歴史と諺(ことわざ)はどんな場面にでも当てはまるように、良い例・悪い例の両方とも備えているものです。
過去に政府が支出を増やしたからと言って、いつでも株高になったわけではありません。政府が戦費を増やした結果、激しいインフレを引き起こして、株のリターンを押し下げたベトナム戦争のような例もあります。
1960年頃からベトナム戦争で政府の支出が大きくなり、二桁を超える激しいインフレに見舞われた1970年代のアメリカ市場は、株のリターンが大きく低下しました。
リターン | 株 | 長期国債 | 金 | 商品 |
---|---|---|---|---|
1970年代 | 5% | 4% | 30% | 15% |
インフレを考慮した実質リターンでは、株は10年間でマイナスリターンに沈んでします。
実質リターン | 株 | 長期国債 | 金 | 商品 |
---|---|---|---|---|
1970年代 | -2% | -4% | 21% | 7% |
新型コロナウイルス後のアメリカ市場
前回の記事で書いた通り、現時点でアメリカは新型コロナウイルスの収束時期が見えていません。
なので株はまだまだ下落する可能性が高く、少なくとも数週間、ひょっとすると数ヶ月は株の購入タイミングを待つことになると思います。
>>急拡大するアメリカの新型コロナウイルス。収束の見込みはまだ見えず。
しかし、いざウイルスがピークを超え、アメリカ企業も危機を乗り越えて、株を買うタイミングが来たからと言って、全力で株を買うのは少し待ったほうが良いかも知れません。
2020年からアメリカは劇的に政府の支出が増えますが、この政府の支出拡大は第二次世界大戦後のような株高のトレンドではなく、ベトナム戦争後のインフレのように、株にとってマイナスな影響を与える可能性もあるからです。
インフレが来るとしてもしばらく株高が続いた後にインフレが来ると思っているので、まずは下落した株を買おうと思いますが、念のためインフレ率の上昇も視野にいれて、手持ちの現金のうち何割かは、インフレ時にも強い金(ゴールド)や不動産投資信託(REIT)も買おうと考えています。