アメリカの政府の雇用統計発表に先駆けて、ADPとムーディーズの民間会社が共同で調査しているADP雇用統計が発表されました。
結果はかなり悪かったです。
雇用者の増加数は、予想も前月も大きく下回る6.7万人でした。
- 予想:14.0万人増
- 結果:6.7万人増で予想を大きく下回る。前月12.1万人増も下回る。
グラフにしてみると、2019年の雇用の減速ぶりがより鮮明に見えます。
出典:『ADP National Employment Report: Private Sector Employment Increased by 67,000 Jobs in November』
2019年は夏頃までは、世界の経済が減速する中でもアメリカの景気は強いという印象がありましたが、その強さに陰りが見え始めている気がします。
2019年11月の米雇用は低調。「輝きを失いつつある」。
雇用調査をADP社と共同で行ったムーディーズのエコノミストは「アメリカの雇用は輝きを失いつつある」とコメントを発表しています。
雇用市場は、輝きを失いつつある。製造業、コモディティの生産者、小売は雇用に陰りが見える。雇用は減りつつあり、もしも雇用の減速がさらに続けば、失業者が増える事になる。
「輝きを失いつつある」というのは、今の状況を的確に言い当ててる良い表現ですね。
11月の結果はたしかに悪かったですが、この単月の結果だけで失業率が上がるわけでも、景気が悪くなるわけでもないです。
このペースが続いてしまうと、失業率が上がりかねない状況になってきたという程度だと思います。だから、これで「アメリカが不景気になる!」というのはまだ早いです。
鉱工業部門は軒並み雇用減少
雇用者数6.7万人増加の結果だけ見ていると、「今のアメリカは歴史的に失業率が低いから、雇用者数はもう伸びないのでは?」と思うかも知れません。企業は雇いたいのに、人が見つからない状態ですね。
たしかにそれも考えられます。
しかし、雇用者数の増減の内訳を見ていると、鉱工業(鉱業、建設、製造)3部門全てが減少しています。もしも、本当に経済が順調で企業が雇いたいのに人が見つからない状態なら、増加数がゼロに近づいても、マイナスにはならないはずです。
だから私はこの雇用減少は、良くない兆候が見え始めたサインだと思っています。
部門 | 雇用者増加数 |
---|---|
鉱工業 | -1.8万人 |
– 鉱業 | -0.6万人 |
– 建築業 | -0.6万人 |
– 製造業 | -0.6万人 |
サービス業 | 8.5万人 |
幸いサービス業はまだ雇用者を増やしています。8.5万増加のうち、ヘルスケアが3.6万人分の貢献しています。アメリカも高齢者の人口が増えてきて、ヘルスケア業界が伸びているのでしょうか。
雇用者増加とはテーマが違いますが、この辺りはもう少し深ぼっても面白いかも知れません。
悪化が続く2019年11月の米経済指標
さて、12月に入って11月の米経済の指標が続々と発表されていますが、主要な指標はどれも良くないです。
11月米経済指標 | 予想以上 | 予想未満 |
---|---|---|
前月以上 | – | – |
前月未満 | – | ISM製造業 ISM非製造業 コンファレンスボード消費者信頼感 ADP雇用統計 |
実は、中国やヨーロッパでは悪化が続いていた製造業でも最悪期を脱したかのような兆候がいくつか見られるのですが、11月のアメリカにはその様子はありません。
11月にFRBパウエル議長は「リセッション(景気後退)の可能性が現時点で高まっていると考えられる理由は一切ない」と言っていました。リセッションが近いとは全く思いませんが、可能性はわずかに高まっているように思います。