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【Adobe2019年9-11月期決算】アドビ、安定のサブスクリプションビジネスで成長継続中。

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米国株投資家の中には「インデックスで投資しているから、個別株なんて興味ない」という人もいるかも知れません。

でも、どんな企業がどうやって儲けているかを知っていると今の米国株の好調を支えている企業のトレンドが見えてきます。

その意味で注目が高いのはこのアドビです。

2019年の米国株の上昇を支えているアップルとマイクロソフトは定額制ビジネス(サブスクリプション・ビジネス)の成功で株価も上昇していますが、アドビはこれら2社よりもずっと高い9割ほどの売上をサブスクリプション・ビジネスで稼ぐことに成功しています。

この記事では、アドビはどういう会社なのか、2019年4Q決算を内容を振り返り、サブスクリプションビジネスでしっかりと業績を伸ばしている様子を追いかけていきます。

この記事のポイント

  • アドビは圧倒的なシェアを持つデザイナー向けソフトを販売している企業。
  • アドビの2019年9-11月期決算は、予想を超える良い決算だった。今期も売上の90%ほどをサブスクリプションで稼ぐ。
  • サブスクリプション・ビジネスで成功している企業は安定した収益基盤を持っているので、投資家は高い株価をつけても買う。今のアドビもサブス成功で投資家から高い評価をつけられている。

アドビとは

「そもそもアドビって何している企業?」という人もいると思いますので、アドビについてお話します。

アドビは、デザイナー向けソフトを売っている企業です。デザインソフトをうまく使いこなせると画像・映像・ホームページなどでデザイン性の高い作品が作れます。

私も大学時代から趣味でこれらのソフトを使っていますが、素人でも以下のような(少しは)デザイン性の高い画像が作れるようになります。

デザインソフトを使って、作った画像

ビジネスではワードやエクセルがないと仕事にならないという人がいるように、デザイナー業界ではアドビのソフトがないと仕事にならない必須ソフトになっています。

みんなが使っているから自分も使うという状況は、マイクロソフトオフィス・LINE・Facebook・インスタグラムでも見られます。一度こうした支配的な企業になると、株価は長期的に上昇する傾向があるので、私はアドビに注目しています。

「みんな使っているから、私も使う」というのはネットワーク効果と言って、長期的に株価にプラスに働きます。ネットワーク効果については、こちらの記事で詳しく解説しましたので、あわせてご覧ください。

アドビの2019年第4四半期結果

そのアドビの2019年第4四半期決算ですが、売上・利益予想ともにアナリストの予想を上回る良い決算になりました。

  • 売上:予想29.7億ドルを上回る、結果29.9億ドル(前年比+23%)
  • 一株利益:予想2.26ドルを上回る、結果2.29ドル

売上の前年比23%アップも悪くないです。

成長分野の成長率鈍化はやや懸念事項

アドビに関しては、不安がないわけではありません。

アドビには大きく2つの部門があります。デザインソフトを扱うデジタル・メディア事業は堅調ですが、もう一つの成長分野の成長率が鈍化してきています。

  • デジタル・メディア事業:デザイナー向けデザインソフトやドキュメントソフト(PDF等)を販売する主力事業。
  • デジタル・エクスペリエンス事業:近年買収を進めているWebマーケティング支援ツールを販売する成長事業。

こちらの2019年4Qの事業別売上成長率ですが、エクスペリエンス事業は主力のメディア事業の3分の1程度の規模しかないのに、成長率が早くも成長率が変わらない程度まで鈍化しています。

売上(単位:10億ドル) 2019年4Q 前年比
デジタル・メディア事業 2.99 22%
デジタル・エクスペリエンス事業 0.86 24%

本来ならいつか起こる主力事業の成長鈍化をサポートする役目を果たしたいwebマーケティング事業ですが、その成長エンジンに既に鈍化が見られることがやや気がかりです。

圧倒的に高いサブスクリプション売上比率

先に不安な点に触れたので、ここからは明るい話題に入ります。

アドビの売上を販売形態ごとに見てみると、この企業が特別な理由が見えてきます。

以下は、2019年4Qのアドビの売上構成ですが、その90%はサブスクリプション・ビジネスから来ています。

売上(単位1000ドル) 2019年4Q 割合
サブスクリプション 2,686,829 89.8%
プロダクト 167,097 5.6%
サービス 138,018 4.6%
合計 2,991,944 100%

アドビは時価総額が1500億ドルもあってマクドナルドやナイキと方を並べるほどの大企業です。でも大企業でありながら、売上のほぼ全部をサブスクリプションから叩き出している企業はかなりレアです。

このサブスクリプション売上比率の高さはマイクロソフト、アップル、ディズニーなどの他の企業と一線を画します。大企業で、ここまでサブスクリプション売上比率が高いのは、アドビかネットフリックスくらいです。

サブスクリプション・ビジネスの割合が高くて順調に売上上昇していることは、株価にとってかなりプラスに働きます。

サブスクリプションビジネスの成功が株価を押し上げる要因

なぜ、サブスクリプションビジネスが株価にプラスに働くかというと、1つ目の理由は、投資家は安定した収益基盤を持っている企業に高い株価をつけてでも買う傾向があるからです。

サブスクの安定収益基盤に高い株価をつける投資家

実際には、近年のアドビの株価を見ても順調に株価をのばしていることがわかります。

5年間で株価を4倍にしたアドビ

販売機会ロスを確実になくしたアドビ

サブスクリプションビジネスで株価が上がる理由の2つ目は、製品販売機会ロスを防げるからです。

サブスクリプションを始める前のアドビは、ソフトウェアをCDやDVDで販売する企業でした。

私も大学時代からアドビのデザインソフトのDVDを買っていましたが、学生割引を使ってもソフトは数万円、まとめ買いした場合でも10万円以上したので、一度買ったらどんなに新しいソフトが発売されても、ずっと昔のソフトを使っていました。

そんな私のようなユーザを多く抱えていたアドビは、新しい便利な機能を盛り込んだソフトを作っても売り逃しが多発していました。

でも、クラウド経由で最新ソフトをダウンロードできる月額定額制ビジネスに切り替えてから、状況が一変します。

一度に数-数十万も支払えなかったユーザでも月額数千円なら払えるようになって、最新のソフトの機能が使えるようになり、アドビは新製品の販売機会損失を抑えることに成功しました。

そして、安定して毎月ユーザから一定額を払ってくれるようになったことで、近年のアドビの収益は一気に改善します。特に定額制ビジネスが浸透しはじめた2014年以降の成長が著しいです。

右肩上がりに上昇するアドビの収益性

まとめ

この記事では、2019年4Qのアドビの決算を振り返りながら、アドビの株価を支えているサブスクリプション・ビジネスについて触れていきました。

アドビは事業別に見ると、新規参入分野のデジタル・エクスペリエンス(webマーケティングツール販売)で思ったとおりの成長が出来ていないようには思います。しかし、主力事業を見るとまだまだ健全です。

アドビを取り巻く環境

  • デザイナーソフト領域で、圧倒的な高い信頼とシェアを誇っている(経済的な濠の状態)
  • サブスクリプションビジネスへの収益性が改善している(サブスク売上比率90%)
  • 株主がアドビのサブスクの安定収益に高い評価をしている(5年で株価4倍)

アドビには良い風がいくつも吹いています。既に、DVDソフト販売から、クラウド定額制への移行はかなり完了しているので、絶好機は過ぎたように思いますが、これからも安定した収益を上げ続けることは堅そうです。


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