アメリカ企業の本格的な決算シーズンは7月からですが、先週もいくつかの企業は決算発表をしているので触れておきたいと思います。
この記事で見ていくのはアドビです。この企業はデザイナー、イラストレーター、動画クリエイター向けのソフトウェアを定額制で提供している企業で、安定して売上が望める企業という点で魅力的です。
しかし、今年は成長率が鈍くなること、さらに去年までがかなり割高だったこともあって、この1年は苦労をしています。
ただ、この下落の大半は長期金利が上がったことによるもので、これから起こるかもしれない景気と業績の悪化はまだ本格的には織り込んでいないように思います。
この記事のポイント
- アドビの2022年第2四半期(6月3日までの3ヶ月)は売上も一株利益もともに予想を上回る業績を残した。
- ただし、2022年の業績見通しを引き下げたことで、決算発表後に株価は5%近く下げた。
- アドビ株は既に最高値から半値近くになって割高感は薄れてきたが、それでもこれからアメリカの景気後退が近づけば、まだ安くなるはず。
今期は好調も見通しを引き下げたアドビ
2022年第2四半期の業績ですが、一株利益も売上も業績を上回ったようです。
- 一株利益:$3.35(予想$3.31)
- 売上:$4.39B(予想$4.34B)
ただ、前年からの成長率を見ると売上が+14%、一株利益が+11%とアドビにしては物足りない数字が並びます。
新型コロナウイルスが流行していた時期でも売上が14%伸びていたことを考えると、もう少し成長してくれても良い気もします。
単位B:10億ドル | 22Q2 | 前年比 |
---|---|---|
売上 | $4.4B | +14% |
営業利益 | $1.5B | +9% |
一株利益 | $3.4 | +11% |
ただ、去年のアドビの成長率を見てみると、今期の業績がイマイチだったと言うより前年が好調すぎたと見るべきなのかも知れません。前年の2021年は1年間を通じて業績が好調だったので、それに比べると成長率はどうしても鈍化してしまうようです。
利益についても同様で、これから数四半期は前年の高い業績の壁の阻まれて、低い成長率にとどまりそうです。
業績見通しの引き下げ
今回の決算発表後にアドビは時間外に5%株価を下げたのですが、その主な要因は2022年度の業績見通しが引き下げられたからです。
アナリストたちも業績見通しが引き下げられることはある程度予想していたようなのですが、予想よりもやや大きい下方修正があったようです。
- 一株利益の通年見通し:$13.70から$13.50へ下方修正(予想$13.66)
- 売上の通年見通し:$17.90Bから$17.65Bへ下方修正(予想$17.85B)
しかし、よく数字を見てみると今回の業績見通しは一株利益で1.5%引き下げられたに過ぎません。この下げ幅を見る限り、アドビは2022年内で景気が大きく鈍化するとは見ていないようです。
今回の決算発表では業績を引き下げた理由として以下の4つを説明していましたが、曖昧な説明はあるもののユーザからの需要が減っているという印象はありませんでした。
- 2022年は実効税率が高くなる見込みで、利益が圧迫される。
- ウクライナとベラルーシでの販売を中止したため(売上全体の1%超えの規模)
- ドル高による海外売上の減少
- 季節性の影響(?)
さいごに
先日別の記事で書いたように、NY連銀が出している企業の景気指数が悪化しているので、そろそろ企業は業績見通しを引き下げて株価が下がる展開があるのかと最近は考えていました。
そんな中で「アドビが業績見通しを引き下げた」というニュースを見て決算書を見てみましたが、アドビの業績見通しは微調整といった感じで、特にアメリカの景気を考慮したようなものではありませんでした。
前年が高い業績だったので成長率こそ低くなっていますが、アドビはまだ需要が堅調に推移する姿をイメージしているように見えます。
ただ、今のアメリカは金利を引き上げて景気を冷やすことで(需要を引き下げることで)インフレを抑えようとしているので、アナリストや企業の大半がこの需要減少を織り込むまではまだ株は買えないなと感じます。
アドビ株は半値近くなりましたが、まだ安くなると思っています。