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Adobe、新型コロナウイルス流行でも過去最高収益【20年3-5月決算】

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Adobe(アドビ)は画像・映像の編集ソフトや、webサイトの顧客体験を向上させるためのマーケティングツールなどクラウドで提供する企業です。

特に、デザイナーやクリエイター向けの画像・映像編集ソフトは圧倒的なシェアを獲得していて、業界では圧倒的な存在感を示しています。

そのAdobeの3-5月期の決算発表の発表がありました。結果は悪くなかったと思います。決算発表後に株価も上昇し、市場もこの決算の結果を評価したようです。

この3-5月はアメリカで新型コロナウイルスの流行して都市封鎖も行われ、経済が大きく低迷した時期だと言われています。その影響もあって、Adobeの収益は予想を下回りましたが、それでもきちんと成長を続けて過去最高を記録しました。

この記事のポイント

  • Adobeは20年の3-5月期は収益は予想を下回ったもの前年よりも14%成長して過去最高を記録。利益は予想超えの好成績を残した。
  • 収益が予想に届かなかったのは、Web広告管理製品「Advertising Cloud(アドバタイジング・クラウド)」などで収益が落ちたため。
  • Adobeの売上はほとんどがサブスクリプション(定期購読)で、解約さえなければ毎月・毎年売上は発生する。新型コロナウイルスで経済が低迷しても、収益には大きな影響が見られなかった。
  • 長期的に見て、成長事業であるはずのデジタル・エクスペリエンス事業の売上成長が鈍化している点は課題。主力事業が好調なうちに成長のきっかけを掴みたいところ。

事前から予想されていましたが、新型コロナウイルスによるこの企業への悪影響はかなり限定的だったようです。アメリカの景気の最悪期と言われている3-5月期を無事に通過しました。

2020年3-5月期決算決算


Adobeの3-5月期の決算の内容を振り返っていきます。

  • 一株利益:2.45ドルで、予想を0.13ドル上回る。
  • 収益:31.3億ドルで、予想を0.3億ドル下回る(前年比14.2%増)

収益は予想に届きませんでしたが、それでも3-5月期は四半期売上として最高を記録したようです。

利益も順調に成長を続けているようで、今期の当期純利益は前年比で+74%とかなりいい感じです。

収益が予想に届かなかった理由は、3-5月に新型コロナウイルスで経済の大部分がストップしたため、web広告を管理する製品などで0.5億分の収益に悪い影響が出たと決算発表で話がありました。

それさえなければ、100点満点の決算でした。ただ、30億ドルを超える売上の中で、ウイルスによる影響を受けたのは1億ドル未満だったのは、さすがAdobeです。

Adobeの安定感の秘訣は高いサブスクリプション売上比率


Adobeの収益が抜群の安定感を誇っている理由は、ほとんどの製品でサブスクリプション(定期購読)と呼ばれる料金形態を採用しているためです。

サブスクリプションはユーザが解約しなければ、毎月・毎年売上が発生する上、Adobeの製品はデザイナやクリエイタにとって必須のツールで滅多なことでは解約が起きないので、安定して売上があげられます。

そして、Adobeがすごいのはこの定期購読の収入が90%を超えていることです。

この高いサブスクリプション売上比率は、新型コロナウイルスの流行時の売上減少を防ぐ大きな役目を果たしたようです。

部門別売上


ただし、Adobeにも課題がないわけではありません。

このブログでは前から言っているように、将来性を期待されているデジタル・エクスペリエンス事業部で売上成長が鈍化しているのが気がかりです。

Adobeの事業

  • デジタル・メディア事業:デザイナー向けデザインソフトやドキュメントソフト(PDF等)を販売する主力事業。
  • デジタル・エクスペリエンス事業:近年買収を進めているWebマーケティング支援ツールを販売する成長事業。

今のAdobeの主力はデジタル・メディア事業で、この部門が全体の売上の7割を占めています。

一方で、今後の成長が期待されているデジタル・エクスペリエンス事業の収益は、今期はわずかに4%しか伸びていません。主力のデジタル・メディア事業が18%の売上成長を見せている点と比較しても、かなり弱い成長率です。

売上(単位:10億ドル) 2Q20 前年比
デジタル・メディア事業 2.23 +18%
デジタル・エクスペリエンス事業 0.83 +5%
その他 0.07 0%
合計 3.13 +14%

1年前まではまだ様子が違いました。ちゃんとデジタル・エクスペリエンス事業の成長は、主力事業を超えていたので、いつか主力事業の成長が鈍化しても、次なる成長のエンジンとして期待できる存在でした。

収益の鈍化傾向が見られるデジタル・エクスペリエンス事業

デジタル・エクスペリエンス部門はweb広告管理など、景気に左右されやすい製品を持っていることから、アメリカの景気が危ぶまれた2019年以降に成長率が鈍化しているようです。(注:広告業界は不況でもっとも景気の影響を受ける業界の1つです。)

グーグルやフェイスブックなどデジタル広告を扱っている会社は、どれもアメリカの景気がピークだった2018年を堺に売上成長の低迷に苦しんでいますが、Adobeのエクスペリエンス事業も同じ悩みを抱えているようです。

さいごに


2020年3-5月のAdobeの決算を見てきました。

結果は収益が予想を下回ったので満点ではあリませんが、アメリカの景気がGDP成長率マイナス30%ともマイナス40%とも言われている時期で、Adobeの売上は前年比+14%、利益は+74%と圧倒的な安定感を示した点に価値があると思っています

2020年のアメリカの景気低迷はまだ予断を許しませんが、私もAdobeの株主として、業績がそこまで落ち込まず、株価も一時期の急落から回復して、ひとまず安心しています。

3月末以降順調に株価を回復させたAdobe

この企業の目下の課題は、成長が期待されるデジタル・エクスペリエンス事業で成長が鈍化している点です。景気に左右されやすい分野であることは確かですが、主力事業が好調なうちに成長のきっかけを掴んでおきたいところです。


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