近年、スマホの容量を食わない軽量版アプリの開発が進んでいます。GoogleやFacebookにSpotifyなどが続々と軽量アプリを出しています。
2019年8月には日本でも軽量検索アプリ「Google Go」が利用可能になり少し有名になりましたが、こうした軽量アプリはもともと発展途上国の100ドルのスマホでも十分使えるくらい小さくてサクサク動いて、不安定なネットワーク環境でも使えるように設計されています。
軽量検索アプリ「Google Go」が世界中で利用可能に(CNET)
なぜ、このような軽量アプリを近年Googleを始めとするIT企業達は熱心に作っているのでしょうか。私は特にGoogleやFacebookは10年後もまだまだ大きく成長する余地があると思っていますが、その理由も交えてお話したいと思います。
デジタル広告を手掛けるIT企業が軽量アプリを作成する理由
軽量アプリを作る理由は、いわずもがな、発展途上国のユーザ獲得のためです。
しかし、そんな単純な理由でこの記事を終わらせたら、さすがにこれを読んでくれる人に申し訳ないので、もう少し深堀りをしてみます。
ここではGoogle、Facebook、Spotifyの軽量アプリを積極的に進めているこの3社に共通する点として、広告ビジネスを採用している点に着目したいと思います。
一般的に、先進国の企業が発展途上国にあまり積極的に進出していかないのは、先進国と同じ戦い方をしても儲かりにくいからです。例えば、先程発展途上国の100ドルのスマホの話をしましたが、アップルの1,000ドルのiPhoneをそのまま発展途上国に展開しても売れないわけです。
しかし、広告ビジネスは違います。
例えば、Googleは多くのユーザに検索をしてもらい、検索結果画面に広告を表示することで収入を得ていますが、この仕組は発展途上国でもそのまま使えます。広告単価は低くなりますが、検索ユーザを獲得するためのコストも安くすむので、商売が成り立ちやすいのです。
なので、広告ビジネスを展開しているIT企業は、発展途上国にも積極的に進出していくために軽量なアプリを作り、経済が発展する前からユーザを獲得してしまおうと意気込んでいます。
Googleの発展途上国の戦略
上にあげた3社の中以外にもUberやLINEなど広告ビジネスではないIT企業でも軽量アプリに取り組んでいますが、もっとも明確に発展途上国への進出を打ち出しているのはGoogleかも知れません。
Googleが発展途上国への進出を力強く宣言したのは、2017年の年次イベントGoogle I/Oです。
この時、世界でAndroid端末が20億台を突破したことが発表されましたが、20億台を次の30億台に引き上げるために発表されたのが、発展途上国向け軽量版Androidでした。
Googleはまずスマホの基本ソフト(OS)であるAndroidの軽量版を作り、その後、検索アプリ、写真アプリ、地図アプリ、youtubeアプリの軽量版を次々と作ることになります。
ちょっと脱線しますが、2017年はGoogleにとって転換点を迎えた年かもしれません。今ではGoogleは世界で有数の人工知能(AI)技術を持つ会社になりましたが、人工知能を最優先に考えるAI Firstという宣言をしたのもこのGoogle I/O 2017でした。
さて、軽量アプリの努力のかいもあって、携帯電話でのGoogleの検索エンジンのシェアはインドで98.9%、アフリカでも99.0%を獲得しています。
Mobile Search Engine Market Share India(StatCounter)
Mobile Search Engine Market Share Africa(StatCounter)
ちなみに、Googleは世界のインターネット人口が半分の40億しかなく、発展途上国のインターネット環境がまだまだ十分でないことにも課題意識を持っています。インターネット利用人口を増やすため、ひいてはGoogleユーザ数を増やすためのプロジェクトも進めています。
詳細はこちら:Googleが目指す、世界中の人々がインターネットを使える世界。
Facebookも軽量アプリでシェアを伸ばす
一番説明しやすかったのがGoogleの取り組みだったので、Googleにたくさんの文字を費やしてしまいましたが、Facebookの軽量アプリの取り組みも順調に軌道に載っています。
Facebookアプリ、whatsappアプリ、Instagramアプリは軽量版がリリースされ、インドではいずれも高いシェアを誇っています。下図はインドでのソーシャルメディアの利用率を示していますが、2-5位はFacebook社のサービスが占めています。
特に、インドではWhatsappというLINEのようなアプリが流行っており、2017年時に2億ユーザでしたが、今では4億ユーザを獲得していると言われています。
WhatsAppの世界最大のマーケットであるインドのユーザー数は4億人(Tech Crunch Japan)
発展途上国とともに発展するデジタル広告
既にGoogleもFacebokも、発展途上国の市場にうまく入り込んでいると言えます。現状では、GoogleもFacebookも新興国・発展途上国の売上はとても小さいと思われますが、経済の発展とともに売上を伸ばせる仕組みづくりはできているようです。
デジタル広告はGoogleとFacebookが2強となっていますが、アメリカや先進国で存在感を発揮しているだけでなく、次の世代を見越して発展途上国にまでリーチできている点で、まだまだ長期的に大きな伸びしろを持っていると言えます。
その他のGoogleの最新ニュースとビジネス動向は、Googleの企業分析ページでまとめています。詳しくはこちらをご覧ください。
【米国株】Google株の銘柄分析【最新のIT技術をリードするアルファベット】
Googleを知らない人はいないと思います。しかし、Googleが今何に取り組んでいるかの動向を把握できている人はそう多くないはずです。「Googleのビジネス動向」と「近年の株価と業積の変化」の両面を見つつ、Googleと親会社アルファベットの今を追いかけます。