先週の大手ハイテク企業の決算が終わって、決算シーズンが落ち着いた感があります。
ここではまだ記事を書けていなかったアップルの決算について書いていきます。
結論としては、総じて良くありませんでした。また、他の大手ハイテク企業ほどではないものの、アップルも「コストカットを進めており、採用に慎重になっている」と言葉を残しています。
投資よりもコストカットに進める状況から見ても、今後もまだしばらくは本調子ではない決算が続くと思われます。
この記事のポイント
- 2022年10-12月期は一株利益も売上も予想を下回った。
- 低迷した原因は、ドル高、中国での工場の稼働率低下、経済環境。
- 10-12月期に滞ったiPhoneの製造は回復し売上も減少幅を縮める見通しだが、1-3月期の全社の売上は10-12月期並みにとどまるとした。
前年比マイナス5%に沈んだ売上
10-12月期のアップルはパッとしない決算でした。
中国の新型コロナウイルスの影響でiPhoneなどの製造が滞っていると11月の時点からアナウンスしていたことから、もともと低い業績がアナリストから予想されていましたが、それも下回る結果になりました。
- 一株利益:$1.88(予想$1.94)
- 売上:$117.15B(予想$121.10B)
今回の決算で売上も一株利益もともに前年比マイナス成長に落ち込んでいます。
単位B:10億ドル | 23Q1 | 前年比 |
---|---|---|
売上 | $117.2B | -5% |
営業利益 | $36.0B | -13% |
一株利益 | $1.88 | -10% |
成長率は2022年からズルズルと下がっていましたが、今期でマイナスに沈んだ形になります。
低迷の背景
アップルが低迷してる理由については、ここまででいくつか触れていますが、アップルからちゃんとした説明もされているので数字も合わせて見ていきます。
ティム・クックCEOいわく、今回のアップルの低迷の原因は次の3つです。
- (1)ドル高
- (2)10-12月期の中国ロックダウンによる製造遅延
- (3)経済環境
このうち(1)と(2)について、少し見ていきます。
ドル高
アップルはアメリカ以外での地域でドル高の影響で8%分の影響を受けており、それがなければ世界のほとんどの地域でプラス成長を維持できたと言います。
次の表で地域ごとの売上成長率をまとめましたが、なるほど、確かに8%分のマイナスがなければプラス成長になっていたはずの地域がいくつもありそうです。
単位:10億ドル | 23Q1 | 構成比 | 前期比 |
---|---|---|---|
アメリカ | $49.3B | 42% | -4% |
ヨーロッパ | $27.7B | 24% | -7% |
中国 | $23.9B | 20% | -7% |
日本 | $6.8B | 6% | -5% |
アジア太平洋 | $9.5B | 8% | -3% |
合計 | $117.2B | 100% | -5% |
中国ロックダウンの影響
次に、アップルの低迷の原因は、10-12月期の中国のロックダウンです。
10-12月期はまだ中国がゼロコロナ政策を続けていた時期で、特にiPhoneを製造する工場の稼働率が低下して、iPhoneの売上に悪い影響が出たと言います。
下のグラフは製品ごとの売上成長率ですが、iPhoneはマイナス8%にまで沈んでいます。
iPhoneの売上はアップル全体の56%を占めるので、この分野がマイナス成長になるのはアップルとしては痛手でした。
1-3月期について
アップルはガイダンスは出していませんが、その代わり決算発表で1-3月期についていくつかコメントをしているので拾っていきたいと思います。
- 1-3月期の売上は10-12月期と似たような下落トレンドが続いている。
- サービスは成長しているが、Mac(PC)とiPad(タブレット)は二桁のマイナス成長。iPhoneの売上は10-12月期よりもマイナス幅が改善する見通し。
- 10-12月期に苦しんだ製造工場の稼働は、満足できる水準にまで回復した。
工場の稼働が回復し主力のiPhoneのマイナス成長がいくらか改善されるのは良い兆候ですが、1-3月の決算もそれほど明るくない様子が伝わってきます。
また、10-12月期に比べれば1-3月はドル高も改善されているはずなのですが、それでも1-3月期の見通しが明るくないということは経済環境の悪化で業績が落ち込んでいる影響も少なくないようです。
われわれは厳しい環境にいることを認識している。だから、コスト削減を行っている。採用にはとても慎重に計画的に行っている、
ティム・クックCEO
まだ明るい話題が少ないので、1-3月期もまだアップルは苦戦が続くのかも知れません。