少し前のことになりますが、アップルが2021年4-6月期(第3四半期)決算を発表したので、振り返っておきます。
この記事のポイント
- アップルの2021年4-6月期は売上・一株利益ともに予想を超える結果だった。特に売上は予想を大きく上回った。
- 業績好調の主な要因はiPhone。iPhone12シリーズが好調で、前年比で約+50%で売上が伸びている。
- しかし、iPhoneとiPadは7-9月期に部品調不足などの懸念材料がある模様。そのために株価は決算発表後に売られた。
2021年4-6月期もかなりの好業績
4−6月期の業績はかなり良かったです。まず、売上も一株利益もアナリストの予想をちゃんと上回りました。
- 売上:814.1億ドル(予想733億ドル、前年比+36%)
- 一株利益:1.30ドル(予想1.01ドル、前年比+100%)
売上は予想よりにも約10%、一株利益は予想よりも約30%も良い業績を発表しています。特に、一株利益は前年の2倍に伸びるなど、今期も大きく成長できたようです。
単位B:10億ドル | 21Q3 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $81.4B | +36% |
営業利益 | $24.1B | +84% |
一株利益 | $1.30 | +100% |
急成長した前回決算に比べるとさすがに成長率は鈍化
今期のアップルはかなりの好調だったことがわかりましたが、少し冷静になって以下の売上成長率の変化のグラフを眺めてみると、前回の1-3月期の売上成長率には及ばなかったようです。
記事の後半でも触れますが、2021年になってから部品不足などの問題が一部がPCやタブレット端末で見られているようで、成長率は鈍化しています。
また、新型コロナウイルス流行時の恩恵(リモートワークやリモート授業でPCやタブレットの需要が高まったこと)と景気回復の恩恵のピークは、すでに過ぎた可能性もあります。
売上成長率が下がったことで、必然的に営業利益の成長率も鈍化し始めています。
製品別業績
次にアップルの製品別の別の業績を見ていきますが、その前に簡単に製品カテゴリーをおさらいしておきます。
- iPhone:スマートフォン
- Mac:ノートPCとデスクトップPC
- iPad:タブレット端末
- ウェアラブル&ホーム:AppleWatch(腕時計)、AirPods(ワイヤレスイヤホン)など
- サービス:iCould(クラウドサービス)、AppleMusic(音楽)、AppleNews(雑誌)、AppleArcade(ゲーム)、AppleTV+(動画)、ApplePay(電子決済)、AppleCare(製品保証)など
これら製品カテゴリーの中でも売上規模が一番大きいのはスマートフォンのiPhoneですが、今期はこのiPhoneの売上が前年比+50%成長と好調でアップルの好業績を支えました。
決算発表でもアップルのCFOが話をしていましたが、世界のあらゆる地域で4-6月期のiPhone売上の記録を塗り替えるほどの調子だったと言います。
単位B:10億ドル | 21Q3 | 構成比 | 前期比 |
---|---|---|---|
iPhone | $39.6B | 49% | +50% |
Mac | $8.2B | 10% | +16% |
iPad | $7.4B | 9% | +12% |
ウェアラブル | $8.8B | 11% | +36% |
サービス | $17.5B | 21% | +33% |
合計 | $81.4B | 100% | +36% |
一方で、アップル全社の売上でも見たように不安材料がないわけではありません。
前四半期に比べると成長が鈍化したことは既に確認しましたが、今期で大きく成長率が鈍化しているのは「iPad」と「Mac」でした。
今期MacとiPadの成長率が鈍化した背景には、部品不足などの「供給上の制約」があったと言われています。
アメリカの製造業では、2021年になってから部品が不足の問題が表面化して入荷遅延や仕入れ価格高騰の悪影響を受けているようですが、アップルにもその波が訪れているようです。
7-9月期にはiPhoneとiPadにも供給上の問題が起こる
今回の決算でアナリストや投資が一番強く反応したのは、既に始まっている7-9月期の業績見通しに関するアップルのCFOのコメントだと思います。
アップルのCFOによると、7-9月期は供給制約(部品不足などの仕入れの問題)でiPhoneとiPadの売上が影響を受けると言います。
7-9月月期の供給制約は、4-6期に経験したものよりも大きくなると予想しています。そして、その供給制約は制約は主にiPhoneとiPadに影響します。
(2021年4-6月期決算発表時でのアップルCFOのコメントより)
先ほど、4-6月期のMacとiPadの成長率が鈍化している要因として供給上の問題があったとお話しましたが、次の7-9月期は同様の問題がiPhoneとiPadで見られるようです。
また4-6月期のMacとiPadへの供給の問題の悪影響はある程度は緩和できたようですが、7-9月期に降りかかる悪影響は4-6月期よりも規模が大きくなると言います。
その上、今後は売上規模が大きなiPhoneにも影響がでるという点を、アナリストと投資家は警戒をしているようです。
今期の決算は4-6月期の業績は文句なしで良かったのですが、今後の業績にやや不安材料が出てきたので株価は決算発表後に冴えない動きを見せています。