アップルの決算発表がありましたが、文句なしの好決算でした。
前年同期の低迷もあって今期の成長率が著しいことになっていますが、スマホ・タブレット・PCが特に好調だった上に、昨年からずっと好調が続いているサービスやウェアラブル製品なども調子を維持して全体的に良い状態になっています。
この記事のポイント
- 今期のアップルは売上も一株利益も大きく成長した。売上も利益も過去数年見なかった高成長を遂げている。
- iPhone(スマホ)、iPad(タブレット)、Mac(PC)の売上が好調だった。
- 今回の決算を受けて、アナリスト予想が大きく上昇修正される可能性があり、短期的には「買い」
- ただし、金融緩和が縮小されれば、アップルの高い株価は維持できなくなるので、今アップル株を長期目的で買うのは危険
前日のアルファベット(Google)の決算でも感じましたが、想像以上に今の大型ハイテク企業の業績は好調です。
恐らく数年後には大きく縮小されているはずのアメリカの金融緩和を考えると、今のアップル株は(あくまでも私の意見では)割高なので長期投資目的で今この株は買いたくありません。
しかし、数ヶ月単位で機敏に動ける投資家なら、今後しばらくアップルはアナリスト予想よりもずっと利益が大きくなる可能性がまだ十分にあると思います。なので、短期的には買いだと思います。
急成長を遂げたアップル
今期のアップルは売上・一株利益ともに、アナリスト予想を大きく超える急成長を遂げました。
- 売上:予想773.6億ドルに対して、895.8億ドル(予想超え、前年比+54%)
- 一株利益:予想0.99ドルに対して、1.40ドル(予想超え、前年比+119%)
単位:10億ドル | 21Q2 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $89.6B | 54% |
営業利益 | $27.5B | 114% |
一株利益 | $1.40 | 119% |
アップルの決算でこれだけ高い成長率を目にするのは、久しぶりです。おぼろげな記憶ではこれだけ強い数字を見るのは、前CEOのスティーブ・ジョブズがまだ生きていた2010年代前半以来のような気がします。
過去数年の成長率と比較してみると、今期の急成長ぶりが際立ちます。
iPhone、Mac、iPadの売上は絶好調
アップルの製品カテゴリ別の売上を見る前に、何の売上かわかりにくい用語の整理をしておきます。
アップルの売上構成を見る時にわかりにくいのは、「ウェアラブル&ホーム」と「サービス」です。それぞれの以下の製品・サービスが含まれます。
- ウェアラブル&ホーム:AppleWatch(時計)、AirPods(ワイヤレスイヤホン)、HomePod(スピーカー)など
- サービス:iCould(クラウドサービス)、AppleMusic(音楽)、AppleNews(雑誌)、AppleArcade(ゲーム)、AppleTV+(動画)、ApplePay(電子決済)、AppleCare(製品保証)など
1-3月期は全ての製品でアナリスト予想を超える売上になっていたのですが、特にiPhone(スマホ)、Mac(PC)、iPad(タブレット)は前年比で+60%を超える急成長を遂げました。
単位B:10億ドル | 21Q1 | 構成比 | 前期比 |
---|---|---|---|
iPhone | $47.9B | 54% | +66% |
Mac | $9.1B | 10% | +70% |
iPad | $7.8B | 9% | +79% |
ウェアラブル | $7.8B | 9% | +25% |
サービス | $16.9B | 19% | +27% |
合計 | $89.6B | 100% | +54% |
この1年間の製品別の売上成長率をグラフで比較しても、iPhone(スマホ)、Mac(PC)、iPad(タブレット)の成長が加速している様子がわかります。
アップルは短期的には買い
2021年1-3月期のアップルの決算は、予想もしていないほどの好調でした。
結局、投資家としてはアップルの株は「買い」なのかどうかですが、私は今後数ヶ月の短期的には「買い」だと思います。
短期的に「買い」と考える理由
- コロナ前は高価格化したiPhoneの買い控えが深刻だったが、価格の調整や5G対応iPhoneの販売などで買い控えがやや解消されつつある(ただし、恐らく6-9月期は10月発売のiPhoneで例年どおり再び買い控えが起こりそう)。
- アップル社製の半導体「M1」の評判がかなり良く、新型iPadやMacの買い替えが今後もしばらく進む。
- 2021年度と2022年度のアナリストの利益予想が低いため、今後予想引き上げが起こる可能性が大きい。
上記の3つの中で、一番大きい要因は3つ目の利益予想についてです。現時点のアップルのアナリスト予想はかなり低いと思っています。
アナリスト予想 | 一株利益 | 前年比 |
---|---|---|
2021年度 | $4.45 | +35.6% |
2022年度 | $4.68 | +5.2% |
アップルの決算は9月締めなので、今回で2021年度は6ヶ月分の決算発表が終わったのですが、既に一株利益は3.08ドル積み上げています。2021年9月までの残り半年で4.45ドルまで伸ばすのは、簡単に達成可能だと思います。
また、2022年度の一株利益成長予想はわずかに+5.2%ですが、アップルが今回の決算発表で明らかにした自社株買いは900億ドルで時価総額の4%分に相当するので、これも簡単に達成可能です。
つまり、今回の決算を受けてアナリスト予想は大きく上方修正されて、株価は短期的に上昇すると思われます。
ただし、今アップルの株を長期投資目的で買うのは、あまりおすすめしません。今のアップル株はかなり割高だからです。
この割高な状態でも株価が下がらないのは、アメリカの大規模な金融緩和のおかげです。
今後数年以内に金融緩和が縮小されれば、アップルが多少好調で利益を積み上げたとしても株価は大きく下落する恐れがありあす。
また、短期で「買い」ではあるのですが、5-6月にアメリカで予想以上にインフレが進んで、金融緩和の縮小が前倒しが心配される場合には、株価が下落する恐れもあるのでインフレ率の上昇には注意が必要です。
2021年の米国株、5月から6月頃の一時的な下落を少し警戒しています。
また本格的な株価下落は2022年後半だとしても、それまで右肩上がりに株価が上昇するのではなく、何度か雲行きが怪しくなって一時的な下落も経験すると思っています。直近で警戒しているのは5-6月頃です。この記事では、なぜ5-6月に下落が起きやすいと考えているのかを書いていきます。