昨日は2023年後半はやはりアメリカのインフレ率は鈍化しそうだという話をしました。
>>アメリカの物価はやはり上昇と同じペースで鈍化を続けている
では、インフレはもう終わった話なのでしょうか。
私は2023年や2024年でのアメリカのインフレは心配していないですが、2025年以降はまだどっちに転ぶかわからないと思っています。
- 長期的にはインフレ率は、賃金上昇率に数%ほど上下にバラつくような動きを見せている。
- 2022年5月まで上昇した賃金上昇率はその後ゆっくりと低下しているが、それでもまだ前年比5%ほどで高い伸びを示している。
- 今後も賃金上昇率が2.5%前後に向かって下がるなら、インフレの心配はない。しかし、まだ高止まりするリスクは残っている。
賃金上昇率とインフレの関係
よく「賃金上昇率が高止まりするとインフレが根付いてしまう」という話を聞いたことがあると思います。
それはどういうことなのかを、下のグラフを見ながら考えていきます。
下のグラフは赤い線がアメリカの消費者物価(インフレ率)、青い線が製造業の非管理職の賃金上昇率を示したものです。
これを見ると、消費者物価(赤線)は激しく乱高下していますが、だいたい賃金上昇率(青線)を中心に数%分だけ上下にばらついているように見えます。
つまり、インフレ率のバラツキはかなり大きいのですが、バラツキさえ取り除いてしまえば長期的にはインフレ率は賃金上昇と同じような水準になるはずです。
賃金上昇率はまだ完全に落ちきっていない
では、今後のアメリカのインフレ率の行方を考えるために、2023年の賃金上昇率はどうなっているのかを見ていきます。
次のグラフは過去1年間の製造業の非管理職の賃金上昇率(前年比)を示したものですが、これを見る限りは順調に賃金上昇が収まっているようには見えます。
ただ、安心はできません。
前月比で見てみると、最近数ヶ月ではそれほど順調に賃金の伸びは鈍化していないからです。
次のグラフは前月からの賃金の伸びを年率で示した(1年間このままのペースで伸び続けたら何%賃金が上昇するかを計算した)ものですが、最近数ヶ月は4%台で下げ止まっている印象があります。
この状況では前年比の伸びもいずれ4%台で下げ止まってしまいます。つまり、アメリカのインフレはまだ完全には楽観できないことがわかります。
コロナ流行前の賃金の伸びは2%後半から3%前半の伸びが多く見られたので、まだまだ賃金上昇は抑えないといけないようです。
まとめ
昨日は、2023年のアメリカのインフレはこれから大きく低下していく可能性があるという話をしました。
しかし、長期的に見るとインフレ率は(大きなバラツキはあるものの)賃金上昇率と同じような動きになるはずなので、4%台で高止まりしそうな今の賃金の伸びを見ていると、長期的にはまだアメリカでインフレ再燃の恐れは残っています。
2023年後半から2024年にかけてインフレが賃金上昇率よりも下ブレすれば一時的に2%台のインフレも見えてきますが、反対に2025年あたりにインフレが再び賃金に対して上ブレてしまえば5%や6%のインフレ率に逆戻りする可能性もまだありえます。
今後の展開を占うためには、賃金の上昇率はこれからも注目すべき数字になりそうです。
次にやってくる景気後退を経てもまだ賃金上昇率が高いなら、インフレを見越して素材株や石油株などを多めに買っておいても良さそうです。