3月に欧米で銀行不安が起こった時に、「銀行の貸出態度がきつくなれば、FRBが利上げをしなくても良くなる」という意見を聞きました。
3月や4月に銀行業界が揺れていた時期に比べると、今は利上げ停止や利下げ開始の期待が後退しているのですが、銀行の貸出態度は経済にまだ何も影響を与えてないのでしょうか。
ここでは、銀行の貸出態度に関するデータを眺めてみたいと思います。
この記事のポイント
- 銀行から企業への貸出態度は厳しくなっており、企業への貸出金額の減少は続いている。
- 既に第1四半期で大きく低迷したアメリカの民間国内投資は、今後も低迷が続くと予想される。
- 銀行の貸出態度の厳格化は雇用やインフレに対して目に見えて分かる影響がまだ出ていないが、経済を確実に減速させている。
アメリカの銀行から企業への貸出は厳しくなっている
最近のアメリカでは思ったほど、景気が悪くないという印象があります。
3月の銀行不安時には「銀行の貸出態度がきつくなれば、FRBが利上げをしなくても良いのではないか」という意見も多く見られました。しかし、最近はそのような意見を一時期ほど聞かなくなりました。
国際通貨基金(IMF)で専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエバさんは次のように言っています。
貸出の大幅な減速はまだ見られません。いくらか減速していますが、FRBが金融引き締めを後退させるほどの規模ではありません。
「(銀行の貸出が)いくらか減速している」というものの、FRBは引き締めをやめるべきではないという考えをもっているようです。
たしかに、発表済みの経済指標を見ていると、雇用がまだ強かったり目標とするインフレ率にまで遠かったりするのですが、一方で銀行の貸出態度はたしかに厳しくなっているというデータはちゃんと存在します。
次のグラフは銀行から企業への貸出の厳しさ(グラフが上にいくほどお金を貸さない)を表したものですが、既に過去のリセッションに迫る水準にまで厳しくなっています。
そして、最近の銀行から企業への貸出金額の前年比(下グラフ)を見ていると、リセッション前にみられる貸出金額の鈍化は始まっているようにも見えます。
貸出が厳しくなれば、企業は投資をしにくくなります。なので、既に2023年第1四半期に前期比(年率)マイナス7%に沈んだアメリカの国内投資はまだしばらくマイナス圏をさまようことになると思います。
まとめ
この記事では、最近のアメリカの銀行の貸出態度について書いていきました。
クリスタリナ・ゲオルギエバ氏が満足するような大幅な貸出の減速ではないかもしれませんが、着実に銀行の貸し渋りは進んでいるようです。
アメリカ経済がソフトランディングになるのかハードランディングになるのかは知りませんが、飛行機の高度はちゃんと下がっているようにみえます。
雇用が強いのでなかなか分かりやすい形でアメリカ経済の低迷が見えてきませんが、リセッションが起こらないことはないと思っています。