金利を引き下げれば、株価は上昇する傾向があります。
2019年は米国株が絶好調でしたが、原因を探るとFRB議長が利下げを示唆する発言から流れが変わりました。
この記事を書いている2月最後の週は、5営業日全てで株価が大幅に下落し、市場は利下げを予想する声が高まっています。そんな中、政策金利を決める立場のFRBが動きを見せました。
FRBパウエル議長はとても簡潔な声明文を公開し、金利の引き下げる意向があることを伝えています。
The fundamentals of the U.S. economy remain strong. However, the coronavirus poses evolving risks to economic activity. The Federal Reserve is closely monitoring developments and their implications for the economic outlook. We will use our tools and act as appropriate to support the economy. (Federal Reserve Chair Jerome H. Powell)
アメリカ経済は依然として力強いが、コロナウイルスが経済活動にリスクになっている。Fed(≒中央銀行FRB)は、感染状況と今後の経済見通しがどの程度影響を受けるかを注意深く見ているところだ。経済をサポートするために、私達の採れる手段で、適切に行動するつもりだ。(FRBパウエル議長)
“act as appropriate(適切に行動する)”という単語に聞き覚えがある人は多いはずです。2019年に10年ぶりに利下げをする前にも、「適切に行動する」と前もって宣言したあとで、利下げをしました。
早ければ来月3月18日の政策金利を決める会議FOMCで、政策金利の引き下げがありそうです。
FRB利下げ示唆でも、市場の反応はやや薄い
しかし、気になっているのはFRB議長のありがたい言葉にも関わらず、市場の反応が鈍いことです。
FRBの声明文の発表直後は、S&P500の株価はあまり反応しませんでした。
救いがあるとすれば、市場が閉まる30分前に買いが殺到して、最後に下げ幅を縮めて終わったことくらいです。
もう少し何か温かい反応をしても良いと思うのですが、市場が既に利下げを織り込んでいたのか、利下げを無視できるほど新型コロナウイルスを脅威だとみなしているかのどちらかでしょうか。
たしかに、利下げをしても新型コロナウイルスで落ち込んだ業績は回復しにくいです。例えばアップルは、中国工場の立ち上がりの遅れを理由に売上目標が達成できないと発表していましたが、利下げをしたからと言って、中国で組み立てているiPhoneの生産ペースが上がるわけでもありません。
感染者数ピーク時に株価が反転か
前の記事でも書きましたが、やはり本格的に株価が上昇するまでには2ステップ必要なのかもしれません。
- ステップ1:利下げで株価が下げ止まり、落ち着く。
- ステップ2:利下げに加えて、新型コロナウイルスが収束されれば、株価が力強く上昇する
ステップ2については、完全に収束しなくても、感染者数のピークを過ぎたタイミングで株価上昇が見られるかも知れません。
2003年のSaaSが流行した頃のデータを見ると、感染者の増加数がピークがさったタイミングで香港株は上昇しています。
上のグラフで灰色の棒グラフがSaaSの感染者数の変化ですが、ピークを迎えたタイミングで香港株(青色の折れ線グラフ)が下降から上昇トレンドに反転しています。
米国での新型コロナウイルスはピークどころか、これから少しずつ拡大していく段階です。香港の例に習えば、今後数ヶ月は株の低迷が続く恐れもある状況でした。そこに、FRBの利下げが加わって、どの程度下落が食い止められるか注意してみていきたいと思います。
また、来週から3月に入って米国の経済データが続々と発表されます。世界に新型コロナウイルスが広まる中でも、米国の景気は予想よりも良かったとわかれば、安心材料となって株価下落のブレーキになるかも知れません。
(もちろん、逆に予想以上に経済指標が悪化して、株価が更に下落する恐れもありますが。)
2月最終週は、株価を見ても下落しているチャートしか見れませんでしたが、「利下げ期待」と「予想を超える経済指標」から下げ止まる展開を期待したいです。