2020年1月の主なアメリカの経済指標が出揃いました。すでにこのブログでは何度も言っていますが、1月のアメリカは、景気がかなり強かったです。
雇用環境・製造業・サービス業・住宅投資などあらゆるデータが前月から力強く改善しました。これらのデータをもとにして、今後のアメリカの景気を占う景気先行指標(LEI)が毎月下旬に発表されますが、この数字も力強く回復しています。
この記事のポイント
- 1月は総じてアメリカの景気が良かった。
- アメリカの景気を占う景気先行指標も1月は予想以上の好結果だった。景気後退が遠のいたように見える。
- ただし、1月の景気先行指標には新型コロナウイルスの影響がまだ入っていない。今度、一時的に大きな経済データの悪化があっても、慌てないで数字を見る必要がある。
強かった1月のアメリカの景気
なんと言っても1月は景気が強かったです。数カ月ぶり、数年ぶりの強さを見せた数字がズラズラと並びます。
以下の箇条書きは、全部読むと大変だと思うので「〇〇年ぶりの高水準というデータが多いな」と確認したら流し読みしてください。
- ISM製造業指数:米国の製造業が感じる景気。6ヶ月ぶりの高水準
- ISM非製造業指数:米国の非製造業が感じる景気。5ヶ月ぶりの高水準
- 雇用統計:政府発表の雇用。2ヶ月ぶりの高水準
- ADP雇用統計:ADP社が集計した企業の雇用増加数。12ヶ月ぶりの高水準
- ミシガン大学消費者信頼感:消費者が感じる景気(500世帯調査)。8ヶ月ぶりの高水準
- コンファレンスボード消費者信頼感:消費者が感じる景気(5000世帯調査)。5ヶ月ぶり高水準
- 建築許可数:住宅建築の申請許可数。13年ぶり高水準
- 米景気先行指標:今後のアメリカの景気の強さを示す数字。2年ぶり高水準
これだけあらゆるデータが好調な月は、久しぶりに見ました。一言でいうと、あっぱれでした。
急回復した20年1月景気先行指標
あらゆる経済データが好調だったので、必然的に今後のアメリカの景気見通しを示す景気先行指標(LEI)も改善しました。
このLEIはブラックロックやグッケンハイムなどの資産運用会社の資料や発表でもたびたび登場する数字です。主に、景気後退が近いかどうかを見るために使われていて、例えばLEIが4ヶ月連続で前月比でマイナスになると、高確率で半年以内に景気後退(リセッション・不景気)になるというデータもあります。
米景気先行指標
- 1959年以降、3ヶ月連続でLEIが下落した11回のうち7回で、半年以内にリセッション(64%)。
- 1959年以降、4ヶ月連続でLEIが下落した8回のうち7回で、高確率で半年以内にリセッション(88%)。
2019年は3ヶ月連続のLEI下落を経験し、あと少しで4ヶ月連続で景気後退のシグナルが点灯しそうなところまで来ていましたが、ギリギリで回避していました。
【2019年11月米景気先行指標】リセッションのレッドランプ点灯をギリギリで回避。
ただ、20年1月のLEIの結果は、相当に強かったです。今までのLEIのどんよりとした曇り空を一気に晴らすような良い結果でした。
20年1月の米景気先行指標
- 予想:前月比+0.4%
- 結果:前月比+0.8%(18年1月以来、2年ぶりの強さ)
LEIは直近6ヶ月の平均でマイナスの状態が、2ヶ月から最長15ヶ月続くと景気後退になってしまうというデータもありますが、今月の好成績でなんとかマイナス圏突入を防ぎました。
出典:『Advisor Perspectives』
先行きが不安な2月
「これだけ好調になったんだから、もう景気後退の心配はしなくていいのでは?」と思うかもしれませんが、まだ油断は禁物です。
20年1月のアメリカの経済指標は、新型コロナウイルスの影響を受ける前のものです。当然それらをもとにした景気先行指標も新型肺炎の影響を受ける前のものです。
残念ながらこれから新型肺炎の影響で、一時的でも経済指標がかなり悪化することが予想されます。
最近になって、ようやく中国から2月の「コロナ後」の経済データが少しずつ出てくるようになりましたが、2月の前半2週間の中国での車の販売台数は92%減少しているとのニュースもあります。
そもそも車の販売店はほとんど店を閉めていたので、この下落率は仕方ありませんが、今後もこうした大きな悪化が数字として出てくる可能性があるとことは警戒しておいたほうが良さそうです。
新型肺炎は収束すれば、もとの経済に戻ります。なので、長期的には心配していません。楽観的に、悪いデータが出てきても冷静に見ていきたいと思います。