米国株、絶好調ですね。この記事を書いている2月12日も、最高値を更新しました。
株が好調なのは中央銀行FRBが金利引き下げなどの景気対策をしたことが大きいのですが、FRBのパウエル議長は気になる発言をしています。
「今の金利のままで、もしも不況が来てしまったら政府の景気対策が重要になる。その時に備えて、景気が良い間は、政府の赤字を縮小すべし」と政府に対して、言っています。
少しうがった見方かもしれませんが、次の景気後退ではFRBには景気対策の余力がそれほど残っていないとも聞こえます。
この記事のポイント
- 米国株は2020年も今のところ順調。その要因は、2019年のFRBの景気刺激策(金利引下げ等)にある。
- 景気後退前にいくらかの金利を引き下げてしまったので、もしもこのまま次の景気後退が来たら、打てる景気刺激策が少ない状態。
- 将来打つはずだった景気刺激策の前借りをして今のアメリカの株高が成り立っている。その分、次の景気後退時の痛みは強くなるかも知れない。
ちなみに、パウエル議長は今のアメリカの景気の強さには自信を持っていて、景気後退が近いとは言っていません。
ただし「もしも、このままでの状態で次の景気後退が来たら」というシナリオを考えた時には、米国はややリスクがある状態と言えそうです。
パウエル議長の発言
パウエル議長は半年に1回のペースで、議会に呼ばれて金融政策の質問に応える議会証言の場に立ちます。金融政策を決める会議のFOMCと並んで、重要な場なので発言内容をまとめておきたい思います。
パウエル議長の発言
- 米国の経済はゆるやかに拡大。雇用は堅調。
- 2019年夏以降の世界的な景気の逆風に対して、米国は耐えている。
- ただ、現在は低金利の状態。これ以上の引き下げの余地は少ない。(景気刺激策の余地が少ない)
- 次の景気後退では、リーマンショック後のようにFRBが国債を積極的に買う必要が出てくる。
- また、景気が弱くなった時に財政政策による支援も重要になる。
ちなみに過去2回の景気後退期では、不況を脱するために金利を5-5.5%分引き下げていました。今の政策金利は1.5-1.75%なので、たしかに引き下げ余地が少ないことがわかります。
なので、このまま景気後退に突入した場合には、金利引下げ以外の景気刺激策として、FRBは国債の購入(量的緩和)、政府の財政出動が必要になってきます。
そこで問題なのは、米国は景気が良い今の時期に政府の赤字を削減しようとせずに、景気が悪くなると更に赤字を増やす恐れがあることです。
2020年度のはじめの4ヶ月分の予算は前年同期比で25%も赤字が拡大しています。
US deficit surges 25% in fiscal 2020 and is $1.1 trillion over the past year(CNBC)
政府の赤字が膨らんで米国ドルが下がる展開は、日本にいる個人投資家にはあまり嬉しい展開ではありません。日本円の評価額が下がるからです。
どこまで米国政府の赤字が膨らめばドル安に傾くのかはわかりませんが、頭のどこかで警戒しておいても良いかも知れません。
次の景気後退では、「金利引下げ余地が少なく、低迷期が深刻化するリスク」、「ドル安のリスク」がありそうです。