Googleの2019年10-12月期決算が発表になりました。でも、残念ながら、結果はいまいち良くなかったです。
決算発表を受けて、株価は時間外で-4%下落しています。
- 一株利益:15.35ドルで、予想の12.53ドルを大きく上回る(前年比+20%)
- 収益:460.8億ドルで、予想の469.4億ドルを下回る(前年比+17%)
今期の決算を見ていて、気になった点は2点あります。
1点目は業界の動きで「2019年あたりから広告ビジネスの伸びが鈍化しているように感じること」、2点目は「収益の7割を占める検索広告と広告仲介業で成長率が大きく鈍化している」ことです。
1点目の業界動向については、デジタル広告の分野でライバルのFacebookでも、2019年から収益の成長率がかなり緩やかになる傾向が見られました。
>>フェイスブック、利益が予想を下回り株価下落【19年10-12月期決算】
広告ビジネスは景気に左右されやすいので、好景気だった2018年の米国では広告ビジネスは好調だった一方で、2019年は高い前年の数値に対して、成長が鈍化している可能性があります。
2点目については、Googleは主力事業が2019年にかけて低迷していて、今後もしばらく成長率の鈍化が続きそうな気配を感じます。この記事ではこの2点目について、重点的に扱います。
この記事のポイント
- アルファベットの決算では、収益がアナリスト予想を下回った。収益成長率の鈍化傾向止まらず。
- 今のグーグルはGoogleクラウドとYouTube広告は成長エンジンになっているが、まだ規模は小さい。
- 一方で、売上の7割を占めるGoogle検索と広告仲介ビジネスに伸び悩みが見られるので、収益の鈍化傾向はまだ続きそう。
業績
Googleの収益などの主な数字を確認します。
数字がたくさん並びますが、2018年の好調時には収益成長率が25%ほどあったことを頭の片隅に置いておくと、後で話をする収益の鈍化の話に繋がります。
以下の表の収益以外については、サラッと流して問題ありません。
2019年4Q業績
業績(10億ドル) | 4Q19 | 4Q18 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 46.1 | 39.3 | 17% |
営業利益 | 9.3 | 8.2 | 13% |
営業利益率 | 20% | 21% | – |
純利益 | 10.7 | 8.9 | 19% |
一株利益 | 15.35 | 12.77 | 20% |
2019年通期業績
業績(10億ドル) | 2019通年 | 2018通年 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 161.9 | 136.8 | 18% |
営業利益 | 34.2 | 27.5 | 24% |
営業利益率 | 21% | 20% | – |
純利益 | 34.3 | 30.7 | 12% |
一株利益 | 49.16 | 43.70 | 12% |
広告収入の成長率鈍化
上の業績を見ると、2019年第4四半期でも、2019年通年でも、好調時の25%ほどの収益成長率よりもだいぶ下がっていることがわかります。
実際に、四半期ごとに収益の成長率をグラフ化すると2018年第1四半期をピークに、収益が鈍化しています。
収益の成長率の低下傾向には歯止めがかかっていないようです。
売上構成
低迷している原因はどこにあるのかを探るために、売上の詳細を見ていきます。
今期から売上の内訳が変わって、YouTubeやGoogleクラウドの売上が計上されるようになったので、内訳をおさらいしておきます。
- Google検索:検索結果画面に表示される広告の収入
- YouTube広告:Youtubeの動画に表示される広告の収入
- Google Network:Google以外の企業・個人が運営するサイトに広告を掲載して仲介手数料を取るビジネスの収入(Adsenseなど)
- Googleクラウド:クラウドコンピューティングの利用収入
- Googleその他:音楽・動画の定額制配信サービス、スマホ端末(Pixel)の売上
- Google以外の小会社:自動運転のwaymo社などの売上
売上構成(10億ドル) | 4Q19 | 4Q18 | 前年比 |
---|---|---|---|
Google検索 | 27.2 | 23.3 | 17% |
Youtube広告 | 4.7 | 3.6 | 31% |
Google Network | 6.0 | 5.6 | 8% |
Googleクラウド | 2.6 | 1.7 | 53% |
Googleその他 | 5.3 | 4.8 | 10% |
Google以外の子会社 | 0.2 | 0.2 | 12% |
その他 | 0.1 | 0.1 | – |
合計 | 46.1 | 39.3 | 17% |
この表だけでは、どの売上が低迷しているか傾向が把握しづらいので、各売上の2018年と2019年の成長率を比較するグラフを作ってみました。
この表を見る限り、好調だった2018年から低迷した2019年にかけて、売上成長率が下がってるのは、Google検索とGoogle Network(Adsense等)のようです。
しかも、厄介なことに低迷している2つの事業はGoogleの売上の約7割を稼いでいる重要な分野です。これが2019年の売上鈍化の原因でしょう。
YouTubeの売上規模は想定を下回る
Google検索とGoogle Networkの低迷を、高成長なクラウドとYoutubeで補ってくれればいいのですが、残念ながらクラウドもYoutubeも売上規模が十分ではなく、補いきれていません。
また、今期から初めて公開されたYouTubeの広告収入は2019年に151億ドルと、モルガン・スタンレーが事前に予想していた220億ドルを下回っています。
(注意:モルガン・スタンレーの予想収益にはYoutubeの有料版の収益も含まれているようなので、単純には比較できないですが、有料版を含めても恐らく予想を下回ったはずです。)
まとめ
高成長のクラウドとYoutubeの売上規模が大きくなるまでには、もうしばらく時間がかかりそうだとわかったので、Googleの収益鈍化もまだしばらく続く恐れがあります。
ただ、別の記事にも書いていますが、私は長期的にはGoogleにかなり強気です。
高い検索シェアを武器に、世界のデジタル広告市場をFacebookとともに支配しているだけでなく、将来的に人口増加が見込める発展途上国にまで入り込んでいます。
【米国株】Google株の銘柄分析【最新のIT技術をリードするアルファベット】
Googleを知らない人はいないと思います。しかし、Googleが今何に取り組んでいるかの動向を把握できている人はそう多くないはずです。「Googleのビジネス動向」と「近年の株価と業積の変化」の両面を見つつ、Googleと親会社アルファベットの今を追いかけます。
また、10年後に本格化する自動運転や、20年後には大きな発展を遂げる次世代コンピュータの量子コンピュータまで見据えて、それぞれの分野でリードしているのが、このアルファベットです。
2020年は収益の鈍化傾向がまだ続く恐れがある上に、ひょっとすると数年以内に米国株全体も大きく下げる展開もあるかも知れませんが、長い目で見れば、今後訪れる株価の下落は大きな買い場になる可能性もあると思います。