アマゾンの2019年10-12月期の決算発表がありました。
前期まで配送コストの増加に苦しめられてましたが、今期は「翌日配送」「当日配送」を拡充するための投資がちゃんと結果になって現れたようです。
「翌日配達」も「当日配達」も、今期は出荷数が4倍の増えたと発表がありました。その分の収益が上がり、利益も予想以上に大きく伸びたようです。
- 一株利益:6.47ドルで、予想の4.03ドルを大きく上回る。(前年比+7%増加)
- 収益:874.4億ドルで、予想の860.2億ドルを上回る。(前年比+21%増加)
- AWS収益:99.5億ドルで、予想の98.1億ドル(前年比+34%増加)
良い感じですね。決算発表後に、アマゾンの株価は11%上昇しています。
この記事のポイント
- 2019年ホリデーシーズンは配送の投資が結果を出して、収益・利益を伸ばした。
- ただし、アマゾンは引き続きウォールマートなどのライバルと配送の利便性で争っている。配送費の伸びが拡大していて、利益が圧迫されるリスクがあるので今後も注意。
- 成長分野のクラウドとサブスクリプション(プライム会員や定額制サービス)は好調をキープ。
- プライム会員数は1.5億人を突破したと発表。以前、2018年4月に1億人突破を発表していた。
2019年のアマゾン株はマイクロソフト、アップル、グーグルなどのハイテクのライバルに出遅れていましたが、久々に良い材料がでました。
引き継き、配送コストの増加が続いて利益が圧迫されるリスクはありますが、クラウドやサブスクリプションなどオンラインショッピング以外の売上も伸びているので、長期的には悪くない銘柄だと思います。
決算結果
ここからは2019年4Q決算の主要な数字を拾っていきます。
単位:10億ドル | 4Q19 | 4Q18 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 87.4 | 72.4 | 21% |
純利益 | 3.3 | 3.0 | 8% |
一株利益 | 6.47 | 6.04 | 7% |
2019年通期の業績も発表されたので、表にまとめておきます。
単位:10億ドル | 2019 | 2018 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 280.5 | 232.9 | 20% |
純利益 | 11.6 | 10.1 | 15% |
一株利益 | 23.01 | 20.14 | 14% |
2017年や2018年に30%後半から40%収益が増加していた頃のアマゾンの業績を知っている人は、年間20%の収益増加はかなり物足りないと感じるでしょう。
低迷の原因ですが、当時は前年比40%成長していたマーケプレイス(アマゾン以外の業者がアマゾンのサイトで出品する販売形態)の伸びが30%程度に鈍化していること、さらに実店舗の売上がほぼ横ばいで足を引っ張っていることが大きいです。
アマゾンもかなり大きな企業になったので、ずっと30-40%の成長を維持するのは困難なのかもしれません。
成長分野の規模が大きくなるまでの数年は、辛抱の時期です。
部門別売上
アマゾンの売り上げの詳細を見ていく前に、用語の説明から入ります。アマゾンがよく決算報告で使う売上の分類は次の5つです。
- オンラインストア:アマゾンのサイトでアマゾンが販売する商品の売上。
- 実店舗:買収したホールフーズなど実店舗の売上。
- マーケットプレイス:アマゾンのウェブサイトに出店している小売店からの売上。
- サブスクリプション:Amazon Prime会員サービスや音楽配信サービスなどの定額制サービスの売上。
- AWS:クラウドコンピューティングの収入。
- その他:主にアマゾンのオンラインストアの広告収入。
部門別売上(10億ドル) | 売上 | 前年同期比 |
---|---|---|
オンラインストア | 45.7 | 15% |
実店舗 | 4.4 | -1% |
マーケットプレイス | 17.4 | 30% |
サブスクリプション | 5.2 | 32% |
AWS | 10.0 | 34% |
その他(広告収入など) | 4.9 | 41% |
合計 | 87.5 | 21% |
アマゾンはよくクラウドやサブスクリプションが話題にあがりますが、売上規模ではまだオンラインショッピングが圧倒的に存在感が大きい企業です。
ただ、売上成長率を見るとわかるように、アマゾンの成長を牽引しているのは「マーケットプレイス(前年比+30%)」「AWS(+34%)」、「サブスクリプション(前年比+32%)」、「その他広告など(前年比+41%)」です。
これらの成長分野の売上規模はまだ約40%しかありませんが、この数字が50%以上になれば、アマゾンの収益成長率も20%後半が見えてくると思います。
さらに、配送コストのかからない「AWS」「サブスクリプション」「その他」の売上比率が増えれば、利益が改善されるはずです。さきほど「数年は辛抱だ」と言いましたが、こうした分野が成長するまではアマゾンは一時的に低成長になると思います。
話が脱線しますが、実はマイクロソフトでは既に高い成長率と利益率を出すサービスの売上が、製品を上回る転換点を迎えています。
【2019年10-12月期決算】利益率が改善し続けるマイクロソフトのビジネス
マイクロソフトの2019年10-12月期の決算はアナリスト予想を超える内容でした。近年の決算を見ていると、マイクロソフトは高収益なサービスの売上比率が50%を超えて、利益率の高い企業に変わっている印象があります。今期も利益成長が前年比で+40%と躍進しました。
それで今のマイクロソフトは絶好調なわけですが、アマゾンもあと数年すれば今のマイクロソフトのような時期が来ると思います。
クラウドAWSは好調をキープ
AWSは前年比34%で、変わらずに好調です。
四半期ごとのAWSの成長率は鈍化していますが、30%前後の成長率があれば、マイクロソフトとともに市場を支配する形になるので十分でしょう。
サブスクリプションも好調
サブスクリプション売上も好調で+32%で成長しています。
サブスクリプション売上には、プライム会員料金のほか、音楽聴き放題のMusic Unlimited、動画見放題のAmazon Prime Videoなどの料金が含まれます。
今回の決算ではプライム会員は1.5億人を突破し、またMusic Unlimitedの有料会員数も50%以上で成長したと発表がありました。 いいニュースですね。
配送コストの増加について
最後に、アマゾンの懸念点についても触れておきます。最近の決算で毎回触れていますが、配送コストの伸びが著しいです。
オンラインショッピングサイトで攻勢をかけてくるウォールマートなどのライバルを交わすために、アマゾンは米国で配送網の整備をしていますが、配送コストの伸びが収益の伸びを大きく上回る状況が続いています。
前年比 | 収益増加率 | 配送コスト増加率 | 差 |
---|---|---|---|
4Q19 | 21% | 43% | -22% |
3Q19 | 24% | 46% | -22% |
2Q19 | 20% | 36% | -16% |
1Q19 | 17% | 21% | -4% |
4Q18 | 20% | 23% | -3% |
3Q18 | 29% | 22% | 7% |
2Q18 | 39% | 31% | 8% |
1Q18 | 43% | 38% | 5% |
4Q17 | 38% | 31% | 7% |
3Q17 | 34% | 39% | -5% |
2Q17 | 25% | 36% | -11% |
1Q17 | 23% | 34% | -11% |
今期はホリデーシーズンで、大きな売上規模が見込めたので利益もちゃんと出ましたが、通常のシーズンでは再び利益が圧迫されるおそれがあります。
ライバルとの競争に負けず、ただし配送コストを上げすぎず、バランスの良い舵取りができるかがアマゾンに問われています。
そして遠い将来の話をすると、こうした配送コストは将来的にはドローン配送や自動運転トラックによって、劇的にコストが削減されることになります。
無人配達の未来は、法律の整備が間に合っていないので普及するスピードは遅くても、いずれ確実にやってくる未来です。この配送コスト削減を見越して、10年以上の長期投資でアマゾン株を保有しておくのもアリだと思います。
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自動運転はヒトの移動からモノの移動への応用に移ってきました。この変化を受けて儲かる企業はどこにあるのでしょうか。2019年の現段階で自動運転の普及で儲かる米国企業を整理をします。
Amazon自動配達ロボット、シアトルに続きカリフォルニア州でも稼働。
アマゾンは2019年1月にシアトルで自動配達ロボットScoutの試験導入を開始しましたが、その第2の都市としてカリフォルニア州でも導入が始まったようです。Scoutは人、車、待ちのベンチや信号など、街の歩道と障害物を認識しながらゆっくり歩き、自動で配達所から家まで荷物を運んでくれます。