昨晩、このブログではアメリカ経済がいかに堅調かを数字で解く記事を書きました。
その内容は、今のアメリカ経済は直近1週間くらいであがってきたデータだけみる限り、GDP,失業率ともにアメリカ経済の力強い回復を示しており、なおかつインフレが抑えられているため金融引き締めをする必要もないという株式投資には追い風が吹いているという趣旨のものでした。
それから一日とたたず、どうもダウ先物、S&P500先物も含め、アジアの株式市場は全面安の展開です。
記事を書いている5月6日18時時点ではダウは500ポイントを超える1.9%の下落を見せて、米国ニュースサイトの速報記事が出ています。また、既に今日の取引を終えた中国の上海総合指数は-5.58%と大幅安になっています。
私、何かやらかしましたでしょうか。日頃の行いが良くないのでもっと徳を積むべしというお告げか、短期的な株価変動は経済には連動しないという教訓を学ぶべしというお告げか。心を豊かにしたいなら前者の教えを、金銭的に豊かになりたいなら後者の教訓を心に刻む必要がありそうです。
きかっけはトランプ大統領のツイート
今回の中国の株価の全面安の原因になり、そしておそらく今晩のNY市場でも大きな下落を生む要因となるのは、トランプ大統領のツイートでした。
互いに輸入品に高い関税を掛け合う米中貿易戦争は順調に解消に向けて協議が進められているものと楽観視していましたが、突如トランプ大統領は現在10%の関税をかしている中国の輸入品を10日(金)に税率25%に引き上げる発言をしました。
トランプ大統領の主張では、貿易の合意を進めている中、中国が再交渉を持ちかけているために交渉が進展しないと苛立ちをあらわにしています。
こうした状況に、関税をかけていない3250億ドル分の輸入品に対しても、25%の関税をかける用意があると、さらなる関税をちらつかせています。
….of additional goods sent to us by China remain untaxed, but will be shortly, at a rate of 25%. The Tariffs paid to the USA have had little impact on product cost, mostly borne by China. The Trade Deal with China continues, but too slowly, as they attempt to renegotiate. No!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) May 5, 2019
中国は10カ月間、米国に500億ドル分のハイテク製品に25%、2千億ドル分の他の製品に10%の関税を払ってきた。これらの支払いは部分的には我々の素晴らしい経済の結果の原因となっている。10%は10日金曜日に25%に上がる。中国から輸入する3250億ドル分の追加製品は関税がかかっていないが、速やかに25%の税率になる。米国に支払われた関税は製品のコストにほとんど影響を与えておらず、ほとんどは中国が負担してきた。中国との貿易合意は続いているが、中国が再交渉しようと試みており、遅すぎる。ノー!
(日経新聞訳)
協議中止を匂わす中国の対応
こうしたアメリカ政府の対応に対して、中国は今週の米中貿易の協議の参加を見送る可能性が出てきたと言われています。
中国のLiu副首相は、100人部下を引き連れて米中協議に臨み、当初は今週の5月10日金曜日には協議をまとめるとさえ言われていましたが、ここに来てLiu副首相らの渡航をキャンセルする可能性が高まったと言われています。
中国での売上比率が高い企業に高まるリスク
2019年1月にアップルは、中国でのアップル製品の売上低迷を理由に利益警告(予想通りの売上・利益に達しないことの株主への事前通知)を出しましたが、今回のトランプ大統領が追加関税を明らかにしたことで、再び貿易戦争を起因とした中国での売上減速のリスクが高まっています。
CNBCは中国の売上減少リスクが大きな企業を一覧にしていましたが、半導体のクアルコム、AMD、インテルなどをはじめ私も保有するエヌビディアや、アップルもリストアップされています。
半導体メーカーへの影響が大きいのは、中国のデータセンターと交わしている大口契約に影響がでるためです。また、リストアップはされていませんが、米中の商談でしばしば軍事製品の巨額契約を結ぶボーイングも影響が大きい企業の一つと言えます。
昨日の記事では、米国内は順調で警戒すべきは海外要因だと言いましたが、まさかその翌日にしかも大統領が火の粉を散らすとは。何年投資をしていても、わからないものです。
こうした状況にどう動くかは判断が難しいですね。景気サイクルも拡大期も後半なので、買いを入れることはまずないです。もし動く必要があるとすれば、もともと2019年はいつくかの株を売るとしていた方針を、このタイミングで実行するかです。