2020年年初は金(ゴールド)の価格が2013年以来の高値をつけています。アメリカとイランとの対立が激化しているので、安全資産の金にお金が流れているようです。
この記事では、上昇している金の価格とその上昇理由をサラッとおさらいするとともに、小ネタとして「金って人工で作れるようになったら、価値が失われないの?」という素朴な疑問に答えていきます。
この記事のポイント
- アメリカとイランの対立の激化で金利が低下し、リスク要因が増えて金の価格が上昇している。
- 人工で金が作れたら、金の貴重性は減るため価格が下落する可能性はある。ただし、大量に金を作ることはかなり難しい。
金が上昇する理由
企業が儲かったら上がる株や、景気が悪くなると上昇する国債に比べると、金はどういう時に上昇するのかわかりにくいものです。
金の価格がどういう時に上昇するのかを話しするとそれだけで1記事になるのですが、結論からすると以下の3つの場合で金の価格が上昇します。
- 金利が低くなったら、金の価格が上がる。
- インフレ率が上がると、金の価格が上がる。
- リスクが増えると、金の価格が上がる。
詳細はこちらの記事で解説しています。
金の価格が上がる理由【本質はインフレ率と金利です】
「どんな局面で、金が上がりするのかいまいちわからない」という疑問に応えます。結論から言うと、金はインフレ率と金利の2つで価格がほとんど決まります。高インフレか低金利な状態が起こると通貨の価値は減り、モノ(金)の値段が上がるからです。
今回のアメリカとイランの対立では、1日で10年米国債の金利が大きく下落し、さらにイランがアメリカに報復すると言っていてリスクが増えているので、金の価格が上がっているようです。
人工で金が作れたら金の価格は下落するか
6,000年ほど前からお金と同じ様に世界中で価値があるとされてきた金ですが、これだけ価値があるとされるのは、ただただピカピカ光ってからではなく、その貴重性にあります。
金は世界で取れる量が一定で、世界中の金を集めてもオリンピックプール4杯分にしかなりません。
ただ、こういう話をすると投資家の皆さんは先を読むことが得意なので、「技術が進歩すれば金を作れるようになって、価値が落ちるのでは?」と心配する人がいるかも知れません。
ダイヤモンドの世界ではレオナルド・ディカプリオも出資するダイヤモンド・ファンドリーというベンチャー企業が注目を集めたり、ダイヤモンド産出の世界最大手「デビアス」が人工ダイヤモンド専門のブランド「Lightbox」を販売するなど、低価格で人工ダイヤを販売する取り組みが2010年代半ばから活発化しています。
金も同じように人工的に作れれば、価格が下がるのかと疑問が湧くのは当然の話です。
金は人工的には一応作れる
人工的に金が作れて貴重性が失われれば、金の価格は下落します。そして『理論的には』、金を人工的に作ることはできることも既に出来ます。
高校の物理で習う物理の知識を使えば、昔は錬金術だなんて言われて信用されていなかったような、水銀原子から金の原子を作ることも可能です。
でも、問題は人工ダイヤモンドと違って人工ゴールドは現在の技術では採算が取れないので、誰も人工ゴールドを作りたがらないのです。
どんなことをするかというと、まず全長数十キロもする巨大な加速器と呼ばれる施設を用意します。その施設の中で、とんでもない速さに加速させた原子(ベリリウム)を水銀原子に衝突させ、しばらく落ち着くと金の原子が出来上がります。
こうして1年間、巨大な加速器を動かし続けて得られる金の量はわずか0.0002g(1万分の2g)。これを日本円にすると、たった約1円分です。
・・・1年間で1円!?
目を疑うような、リターンの少なさです。
この方法は、ずいぶんと古くから知られている方法なので、最新の科学ではもっと効率的な方法がある可能性もあります。しかし、それを踏まえても、相当な技術革新的が起こらないと人工ゴールドの採算はとれなさそうです。
なので、ダイヤモンドのように人工ゴールドが増えて金の貴重性がなくなることは、当分心配しなくて良さそうです。