ドイツは景気後退の危機を回避しました。2019年第3四半期(3Q)のGDP成長率が発表されて、予想外のプラス成長していたことがわかりました。
「あれ、ドイツって景気後退するって言ってなかったっけ」という方も多いと思います。はい、私も、多くの他のエコノミストも、IMFですらも景気後退すると予想していました。先進国の中で、2019年にもっとも早く景気後退する国はドイツだと思っていたのですが、なんとか持ちこたえたようです。
この記事のポイントはこちらです。
- ドイツは2期連続のマイナス成長(景気後退)を回避した。
- 好調の要因は、家計と政府の支出。この2つがお金を使って、かろうじて経済プラス成長を維持した。
- ただし、まだ危機が去ったわけではない模様。家計に先行する企業が感じる景気はずっと低下している。
景気後退を回避したドイツ
ドイツ政府が発表した2019年3QのGDPの結果を見ていきましょう。
- 予想:-0.1%
- 結果:予想を上回る+0.1%(前期-0.2%)
2期連続でGDPマイナス成長に陥ると、景気後退(テクニカル・リセッション)と言われますが、これを見事に回避しました。これは驚きでした。ドイツの有名な経済研究所もIMFですらも、ドイツが景気後退に陥ると予想していたからです。
ドイツの著名な研究所2つが、2019年3Qでのドイツ景気後退入りを予測。
予想外の好調要因は家計と政府の支出
好調の要因をさぐるために、ドイツ政府の発表を覗いてみると、低迷する景気の中でも、家計と政府が前期より多くのお金を使って、経済を支えたようすが見えてきます。
また前期に比べると、輸入は変わらなかったものの、輸出が増えたこともプラスに働いているようです。ただ、景気の見通しが悪かったからか、機械などの企業の設備投資は減少しています。
ただ、今回のドイツ政府の発表では、詳細なデータは公開されなかったので、何がどれだけ経済成長にプラスに作用したのかまでは、終えませんでした。11月22日になれば詳細が公開されるようなので、後日詳細を確認したいと思います。
まだ危機は去っていない
ドイツのシュルツ財務大臣によれば、2020年にはドイツの経済は勢いを取り戻すと見ています。経済は大きく減速しているものの、危機に陥っているわけではないので、「慎重ながらも楽観的だ。2020年の経済成長率は上向く」と発言しています。
2020年の景気についてはまだ分かりかねますが、今回のGDPの結果を受けても「慎重」な姿勢を崩さないのは、企業の景気が良くないからです。家計の消費は好調だったようですが、家計よりも先行して景気に反応する企業がまだ低迷しています。
(ちなみに、家計よりも企業が景気に先行するのは、ある程度景気が良くても企業はすぐに賃上げ・雇用増加をしないからです。反対に、景気が悪い場合でも、すぐに賃下げ・解雇をしないからです。)
こちらはドイツとヨーロッパの製造業が感じている景気の指数ですが、今年に入ってからずっと低迷を続けています。
また、非製造業の企業が感じている景気も、同じように低迷中です。
シュルツ財務大臣のいうように、2020年は景気が上向く可能性がありますが、それは別の記事でも触れたように中国の2020年の景気によります。
また、企業が今感じている景気が回復していないので、景気後退を回避したからと言って安心するのは、まだ早いと言えそうです。