2019年、株式を公開してからUberの株価は冴えません。この記事を書いている11月上旬では、上場から約30%ほど下回った価格で取引されています。
株価の低迷の原因の一つとして、Uberには収益性の問題が指摘されています。2019年第3四半期の決算では、赤字額が10億ドルを超えていて、簡単に言うとめちゃくちゃ赤字だというわけです。
ただ、Uberもこの状況を黙ってみているわけではありません。Uberのダラ・コスロシャヒCEOも2021年には黒字化を達成するつもりだと意欲的に収益性の改善を宣言しています。
We know there is the expectation of profitability, and we expect to deliver for 2021(Uber CEO, Khosrowshahi)
投資家が利益を期待していることは知っている。2021年には達成するつもりだ。(Uber ダラ・コスロシャヒCEO)
そして最近になってUberは、収益化に向けて2つほど面白い取り組みを始めています。
- Uberの新しい金融部門Uber Moneyの立ち上げ
- 広告ビジネスを展開するUber Eats
この記事では、まずはアメリカで金融サービスを刷新したUber Moneyについて紹介します。
Uber Money
Uberが収益性を改善するために、最近になって再編したのが金融サービス部門のUber Moneyです。
もともと、Uberはクレジットカードを提供するなど金融サービスを提供していましたが、より一層、便利なサービスを新たに発表しています。
リアルタイムでUberからの賃金が反映されるデビットカード
現時点ではまだ米国のみの対応ですが、新たに発表されたデビットカードではドライバーがUberで稼いだお金をリアルタイムに受け取って、すぐに買い物で利用できるようになりました。
また、このデビットカードで支払えばガソリン代が3~6%割り引かれるなど、Uberドライバーにとって嬉しいサービスを備えています。
リアルタイムで最大5%還元されるクレジットカード
デビットカードだけではなく、希望するユーザーにはクレジットカードも発行されます。Uberでの支払い(Uberタクシー、Uber Eats、Uberの電動スクーター、Uberヘリコプターサービス)には5%のキャッシュバックされる他、ホテル代・航空運賃・レストラン代は3%、その他は1%還元されます。
こちらもまずは米国でのサービススタートですが、Uberドライバーだけでなく、Uberを頻繁に使うユーザにも嬉しい特典になっています。
Uberで貯めたポイントや稼いだお金を管理するウオレット機能
クレジットカードの還元や、Uberでドライバーとして稼いだお金(Uber Cash)を管理できるのが、Uber Walletと呼ばれるサービスです。
一定額を下回った場合にはUbe Cashをオートチャージする機能や、他のユーザにUber Cashを送金する機能なども備えています。新しいウォレットアプリが提供されるのではなく、既存のアプリの中にUber Walletサービスが追加されて、より利便性が高いアプリを目指すようです。
つまるところはApple CardのUber版
ここまで読んだ人の中には、2019年にアップルが始めたApple CardのUber版だと気づいた人もいると思います。Apple Cardはアップルが提供を始めたクレジットカードで、最大3%のキャッシュバックが支払いと同時に受けられるサービスが、サービス内容が両社ともにそっくりです。
アップルカードのサービス詳細はこちらの「アップルカード、米国で発行開始。決済サービス企業へと進化を遂げるアップル」で紹介しています。
アップルの場合はゴールドマン・サックスと手を組んでマスターカードからクレジットカードを出しましたが、Uberはバークレイズと手を組んでVisaからクレジットカードを出しています。
デザインもアップルカードにたいぶ寄せているようにも見えるシンプルなデザインです。
Uber MoneyはUberコアユーザ向けのサービス
さて、問題はこうしたアップルカードともろにかぶってしまうような金融サービスで、Uberに勝機があるかどうかです。
Uberのコアユーザとも言える、Uberドライバーを取り込むことにフォーカスしているようですが、この動き方は正しいと思います。Uberで稼ぎ、Uberを使うようなユーザからの収益を上げる点だけに絞れば、わずかでもUberの収益性が改善します。
ただし、一方でUberのコアユーザの利用が囲い込めたとしても、その他ライトなユーザにどれだけUber Cashを使ってもらえるかは、やや少し未知数です。ユーザが既にApple Cardなどの競合サービスを使っている場合、複数のウォレット機能を併用して使うことをあまり好まないからです。
複数のウォレット機能を使う場合には、1つのメインウォレットと残りの複数のサブウォレットのような使い方になると思いますが、Appleのような大きな競合がいるので、UberのCashは必然的にサブのウォレットに回ってしまう可能性が高いです。
大変おもしろい動きではありますが、Appleとのブランド力の違いや取り込むユーザの規模を考えると、世の中に大きなインパクトを与えるサービスと言うよりも、アメリカでよくUberを使うユーザやドライバーに対して、一人あたり収益を着実に上げに行くことを狙った作戦と言えそうです。