中国企業に景気が良いか悪いかアンケートをとって集計したPMIと呼ばれる経済指標があります。50を超えたら景気が良くなっていて、逆に50を下回れば景気が悪化していると、ひと目で分かるようになっている便利な数字です。
50を基準にどれだけ高いか低いかを見ればよい数字なのですが、最近の中国PMIを見ると混乱するようなことが起こっています。中国政府集計のPMIをみると製造業は不振なのに、民間企業集計のものを見ると製造業が急回復していて、この2つの結果が大きく異なっているのです。
「結局どっちが本当の中国の姿なの?」と頭を悩ませる人も多いと思います。
このページでは、最新の2019年10月の中国PMIの結果と直近の数ヶ月の結果を振り返り、結果論にはなりますが中国PMIのほうが中国の実態を示していそうだという考えをお話します。
この記事のポイントはこちらです。
- 中国政府発表の製造業PMIを見る限り、中国製造業は2019年はかなり苦戦しているように見える。
- 一方で、民間の財新製造業PMIは、2019年1月に底を打ってから急回復しているように見える。
- 数字をごまかしにくい輸出や輸入の数字を見ると、中国政府のPMIと近い動きをしてる。つまり、まだ中国の製造業は低迷している可能位が高い。
政府発表PMIでは低迷が見える製造業
直近に発表された2019年10月の中国製造業PMIを見てみると、予想以上に悪化した上に、景気の悪化を意味するボーダーの50を6ヶ月連続で下回りました。
- 予想49.8を下回る結果49.3(50割れは6ヶ月連読)
- (ちなみに、非製造業PMIも予想53.7を下回る結果52.8)
こちらは2017年からのPMIの推移です。製造業PMI(赤線)は、2019年は低迷が続いて、直近は特に毎月50を下回っている点がポイントです。
民間PMIでは2019年1月以降に急回復
一方で、2019年10月の民間の財新PMIを見てみると、様子が異なります。事前予想を上回った上に、ボーダーの50を超えています。
- 財新製造業PMI:予想51.0を上回る51.7
こちらは2017年からのPMIの推移です。2019年は1月に底を打ってからは、製造業(赤線)は急回復しています。
一体どちらが正しいのでしょうか。財新のほうが中小企業へのアンケートの割合が大きいと聞くので、アンケートをとる企業の違いが、結果に反映されているだけかもしれませんが、どちらがより正確に中国の今を捉えているかだけでも、知りたいところです。
貿易統計との関連性が高いのは政府の中国PMI
どちらが中国の製造業の景気を表しているかを見るために、他の指標との関連性を見ることにしましょう。ここでは、数字をごまかしにくい貿易統計の輸出・輸入の数字を見ることにします。以下が、2017年からの輸出入の前年比の伸びを表したものです。
ポイントは2019年1月から景気が浮上しているかですが、景気が良いようには全く見えません。輸出入の動きは、中国政府のPMIと近い動きをしています。
これを見る限り、私は2019年1月から製造業の景気が良くなっているという財新PMIよりも、製造業の低迷を伝えている政府の中国PMIのほうが中国経済の実情に近いと思っています。
もちろん、この私の推論は間違っている可能性も十分にあります。PMIのアンケートは在庫・雇用・納入遅延など様々なアンケート項目の結果出てくるものなので、輸出入との関連性だけみて中国PMIのほうが正しそうというのは、早計です。ただ、財新PMIのように製造業の景気がダダ上がっているのに、輸出入だけ前年割れしているのは変なので、中国PMIのほうが信頼度が高そうだと思っています。
つまり、中国の製造業はまだ低迷している可能性が高いと思っています。