IBMは一時期バフェットが大量に保有していたことで有名です。その当時は日本の米国株投資家にも人気があった銘柄だと記憶しているのですが、最近はバフェットにも個人投資家に見捨てられている株のように見えます。
人気の低迷の理由は、クラウドの波に乗り遅れた売上の低迷です。2010年代はクラウドコンピュータを企業が使い始めた時代ですが、もともと企業に大きなコンピュータを販売していたIBMは、自社のコンピュータ売上を脅かすクラウドに当初積極的に投資できなかったことが響いて、長年の低迷が続いています。
2019年3Q決算も、このクラウドの悪い流れを断ち切れなかったようです。結果は予想を下回る売上に、決算発表後に株価を下げることになっています。
- 一株利益:$2.67の事前予想をわずかに上回る$2.68。
- 収益:182.2億ドルの事前予想を下回る180.3億ドル(前年比マイナス0.6%)
IBMの決算資料はこちらからダウンロードできます。
ただ、IBMの決算書は使われている単語はわかにりくく、普段ITに触れていない人が読んでも「いまいちわからない」と思うことが多いと思います。なので、IBMの決算で見えた様子を、ここでお伝えしたいと思います。
低迷している理由はやはりクラウド
19年3Qの売上が低迷している理由ですが、やはりクラウドに影響を受けているシステム部門とシステムの導入を支援するグローバル・テクノロジー・サービス部門の低迷に有るようです。
部門 | 収益 | 前年比 |
---|---|---|
クラウド&コグニティブソフトウェア | $5.3 | 8% |
グローバル・ビジネス・サービス | $4.1 | 2% |
グローバル・テクノロジー・サービス | $6.7 | -4% |
システム | $1.5 | -14% |
グローバル・ファイナンス | $0.3 | -11% |
名前がわかりにくいのですが、「グローバル・テクノロジー・サービス」とはIBM製品のコンピュータやIBMクラウドコンピュータなどを使ったシステムを設計し、導入、保守運用をするチームです。対象にするIBM製品は、いずれも他社クラウドコンピュータが順調だと、あおりを受けてしまうものばかりです。
そして、もう一つの低迷している部門は大型コンピュータなどの物理マシンを販売する「システム部門」です。こちらは銀行などの絶対に止まってはいけないシステムでよく使われている、1台で億を超えると言われるシステムZの新製品が製品発売の時期だった事もあって、前年比で大きく売上を低下させてしまっています。
買収した期待のRedhatは20%成長も、規模が小さい
ちなみに巨額で買収したRedhatに期待が集まっていますが、Redhatだけの売上は9.87億ドルで、IBMの売上の5%ほどの売上でしかありません。20%で売上が伸びていても、まだIBMの売上を引き上げるには規模が足りません。
ちなみに、Red Hatの売上は上の表の「クラウド&コグニティブソフトウェア」に含まれています。
Red hat買収の進化はこれから発揮される
ただ、Red hatの買収は失敗だったかというとそうではありません。むしろ、その効果があるかどうかは、これからにかかっていると思っています。
ここからは少し技術的は話になるのですが、IBMに投資をする上ではRed Hatの買収の意味は重要なので、ややITよりの話をします。
複数社のクラウド活用の波に乗ってRed hatの売上は伸びる
Red hatはどこの会社のクラウド環境でもクラウド環境ではない大型コンピュータの上でも、関係なくプログラムを動かす動く技術のサポートに定評があります。
クラウドの波は1社のクラウド環境だけを使う形から、複数社のクラウドを使ったり、クラウドではない大型コンピュータも使ったりする、流れにシフトしています。その流れは今後間違いなく本格化するので、どの環境でも動かせる技術のRed Hatサポートの売上は大きくなる可能性があります。
IBMの狙いはRed Hat単体ではなく、導入案件も含めた売上上昇
ただ、IBMが狙っているのはRed Hat単体の売上上昇ではありません。また、Red Hatのサポートを使った複数クラウド技術を導入するとなると複雑なシステムになるので、「グローバル・ビジネス・サービス」部門のコンサルタントに依頼したり、「グローバル・テクノロジー・サービス」にシステム設計を依頼したりする必要も出てきます。
つまり、IBMが狙っているのは、Red Hatを使った導入支援のプロジェクト案件の拡大で、複数部門の売上を増やすことです。複数クラウドの活用が本格化する未来を見越して、Red Hatを使った案件を拡大を進めています。
IBM投資には長期的な目線と温かい目が必要
しかし、IBMが思い描くRed Hatの相乗効果がうまく働く場合でも、売上上昇にはまだまた時間がかかります。私は、アメリカ経済全体が下り坂なうえに、IBM単体でもまだ浮上のきっかけをつかめていないので、この銘柄の買いのタイミングはまだ来ていないと思っています。
もしも、買う場合はもうしばらく続きそうなこの会社の低迷期を一緒に乗り越えようとする、温かい目と忍耐が求められそうです。