アメリカの国債利回りは今後マイナスになるまで低下すると言っている人と、強気な債権相場は暴落して利回りが高騰すると訴える人の二極化しています。
私は、結論としてはどっちも起こりうると思っています。しかし、この結論だけでは、何にも価値が無いので、何か起こった場合には金利がマイナスに向かい、何が起こった場合には今後金利が高騰するのかをここでまとめて書いておこうと思います。
まずは、たとえ話から話を進めます。
「うまい棒がマイナス2個だって?常軌を逸している」
直感的にわからないことがあっても、わかっている事実から正しく推論すれば、答えを予測することができます。
たとえば、中学で一番はじめにマイナスの数のかけ算を習ったときに「は?10円のうまい棒がマイナス2個でいくらかだって!?常軌を逸している。さっぱりわからない!!」と嘆いた人は多いと思います。
でも、確実に正しいとわかっている以下の10の段のかけ算を眺めていれば、ある事に気づきます。
0, 10, 20, 30, 40, 50・・・
「なるほど!かける数が1減ると、答えは10小さくなるのか。じゃあうまい棒がマイナス1個なら-10円。マイナス2個なら-20円だな」とわかり、次第に慣れてくれば「かけ算した結果に、マイナスの符号つければいい」と一般化できるようになります。
数学に限らず、中学の理系の科目で最初に習ういちばん大事なことは「現象をもっとも的確に言い当てられるできるだけシンプルな法則を見つけて検証しよう」というものでした。
「マイナス金利だって?常軌を逸している」
さて、数学の勉強講座ではないので、少しずつお金の話に移っていきます。
JPモルガンアセットマネージメントのファンドマネージャーが、先日ブルームバーグの記事で世界的で広がっているマイナスの国債利回りについて、否定的なコメントをしています。
「マイナス金利でお金を貸すために、お金を払うという概念は常軌を逸している。(…中略…)これだけの紙幣を印刷し、バランスシートに何兆ドルもの証券を積み上げていれば、ある時点で何かが壊れる。近い将来にそうなるとは言わないが、そうなった時に債券投資家が被る損失は壊滅的なものとなるだろう。その環境でプラスのリターンを上げるのが私の仕事だ。」(ブルームバーグ)
どんな価格でも中央銀行が国債買ってくれる期待があるからこそマイナス金利でも買われるだけで、マイナス金利でもそこまで不思議な現象だとは思わないのですが、たしかに直感的には理解しにくい概念です。
ともあれ、マイナス金利は国債が買われすぎのバブルの状態で、いずれ国債利回りは急騰するというのがこのファンドマネージャーの立場です。一方で元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏は「米国債がマイナス金利になるのを阻むものは何も無い」と一段の利回り低下を予想していて、意見が二極化しています。
結局、今後金利は高騰するのか、マイナスになるのか、どちらに傾くのでしょうか。
こういうときには、上の例のようにできるだけシンプルに説明できる法則に注目して考えていきたいと思います。
中央銀行が国債を買う時の、金利が動く仕組み
結論からいうと、今後の各国の中央銀行と政府が動きによって、金利の高騰もマイナス金利もどっちもあり得ると思います。中央銀行も政府も金利に影響を与える行動が取れますが、それぞれの行動が金利に与える法則を出来るだけシンプルにまとめると次のようになります。
- 中央銀行:大量の国債を市場から買えば金利低下。国債購入をやめれば金利上昇。
- 政府:大量の国債を発行すれば金利上昇。国債発行を減らせば金利低下。
そしてこの2両者の綱引きで勝った方に、金利が動くと考えています。
例えば、ドイツではヨーロッパ中央銀行のECBが国債を大量に購入した上にさらに、ドイツ政府は財政健全化を目指して新規国債発行額を抑える金利を引き下げる方向に働いたのでマイナス金利になりました。
また日本の場合は、日銀がバズーカを放って国債を購入して金利を引き下げている間、政府はほぼ何もしなかったので、日銀行の金利引下げ効果が勝って金利が低下しています。
逆にECBから国債買い入れに制限があったギリシャでは、国債が買われる量が多くない上に政府が国債を増発したために金利の急上昇を招いています。
現状アメリカの金利は低下傾向へ
このようにまとめると、アメリカのFRBと政府の動きで、今後金利の動向がうっすら見えてきます。
たとえば、最近ではFRBが毎月600億ドルの短期国債買い入れプログラムを開始したので金利は低下する傾向が見えています。一方、2020年でトランプ大統領が減税を計画しているとの報道もありますが、その規模が毎月600億ドルを超えるものである可能性は低いので、まだアメリカはしばらく金利低下に向かうと個人的に思っています。