10月10-11日に予定されていた米中貿易協議を終え、部分的な合意を結ぶと発表がありました。市場はこれに反応して株価は上昇しました。
しかし、合意内容を見ると「あまり議論が進んでいないこと」がすぐにわかります。本質的な議論が先延ばしされていて、すぐに合意できる内容のものだけ盛り込まれているからです。
市場は賢いので、部分的な合意が本質的ではないことはすぐに分かっているはずです。それでも株価が上がっているのは、10月15日に予定していた追加関税の発動がなくなったからです。これは今回の協議の成果で最も価値あることです。
個人投資家は、部分的な合意を受けて「何か売ったり、買ったり、投資で動いたほうがいいか」というと、私は全く行動を変えなくていいと思っています。今まで株に強気で株を持っていた人は持ち続ければOKですし、景気後退に備えて守りに入っている人も、そのままでOKです。
変わったのは10月15日の予定された関税がなくなったことだけで、本質的には米中貿易協議の前の世界が何も変わらず、そのまま今後も続くからです。
部分的合意「第一弾」の内容は本質的ではなかった
今回の部分的な合意は次の内容でした。トランプ大統領によればこれらは「第1弾」だと言います。まだ文章化されていないものの、今後3-5週間かけて文書してサインし、「第2弾」の交渉にすぐに入るとのことです。
- 知的財産の保護(作品の著作権などが対象とみられ、少なくとも争点になっている中国企業への技術移転は含まない)
- 金融サービス企業に対する市場開放
- 中国から400億-500億ドル相当のアメリカ農産物の購入
参考記事:トランプ大統領、米中の部分合意を発表-貿易協定「第一段階」(ブルームバーグ)
これを見ると判るのですが、協議前にアメリカが望んでいた「中国企業への強制的な技術移転の廃止」も「中国政府から中国企業への補助金の廃止」も入っていません。
従来のトランプ大統領やムニューシン財務長官の発言では、これらこそが主要な論点だったはずなのですが、今回の協議では進展していません。なので、この部分的な合意は本質的ではなく、議論としての進歩がないことがわかります。
部分的合意「第一弾」の内容は本質的ではなかった
また、この第1弾の合意を受けて、アメリカ財務省は来週10月15日に発動が予定されてた追加関税を発動しないことを発表しています。個人的には今回の協議の最大の成果は、関税発動の中止だと思っています。
10月に入ってから発表されたアメリカの経済指標はどれもイマイチな数字ばかりで、堅調なアメリカ経済の雲行きが怪しくなっていました。景気対策持ちこたえているものの、これ以上関税をかけられるのは困る中国とアメリカの利害が一致したように思います。
単位:ドル | 米国 | 中国 |
---|---|---|
第1弾 | 340億(25%) |
340億(25%) |
第2弾 | 160億(25%) |
160億(25%) |
第3弾 | 2000億(25%) |
600億(10-25%) |
第4弾(9/1と12/15) | 9/1開始分:1250億(15%) 12/15開始分:1750億(15%) |
750億(5-10%) |
投資家は部分合意の第一弾で投資行動を変える必要はない
さて、結局のところ部分的合意は本質的じゃなく、成果は10/15関税の中止だとすると、米中貿易協議の前後で、世の中は何が変わったのでしょうか。
整理してみると結局、予定されていた追加関税はなくなったものの、貿易協議前後で何も世界が変わっていないことに気づきます。
10月貿易協議の成果 | 協議前 | 協議後 |
---|---|---|
協議内容 | 技術移転・補助金などが未決着 | 技術移転・補助金などが未決着 (協議前の世界と変わらず) |
関税 | 10/15関税引き上げ予定 | 10/15関税引き下げ中止 (協議前の世界と変わらず) |
既に織り込まれてた関税の影響はなくなったものの、貿易協議前の世界が今後も継続するだけなので、個人投資家は今回の部分的な合意を受けて、何も投資行動を変える必要は無いです。
株を買っていた人はそのままのペースで買えば良く、景気後退のリスクを考えている人はそのまま景気後退にそなえて準備をするなど、それぞれ自分のペースで投資をするのが良いと考えています。
最新記事のご案内
2019年12月に米中は部分合意に至りました。合意第1弾の内容はこちらの記事にまとめましたので、ご覧ください。
【米中貿易協議】第一弾合意に到達。合意内容に見え隠れする米中の狙い。
米中貿易協議の第一弾が合意されました。中国は農産物を500億ドル/年を購入し、米国は12月開始の関税を撤廃、9月実施の関税の税率を軽減させています。第1弾合意の内容を振り返り、両国の狙いについて解説します。