ブレインコンピューティングのスタートアップを買収
Facebookがブレインコンピューティングのベンチャー企業、CTRL-labsを買収したようです。
CTRL-labsは、人が脳を使ってコンピュータを制御する技術(ブレインコンピューティング)を開発している会社です。
英語では声を使って文字を入力する精度はほぼ実用レベルに達しているため、次のステップとして脳で考えた言葉をコンピュータにそのまま伝える技術の開発が注目を集め始めています。
Facebookは2019年8月の時点で、思い浮かべるだけで文字入力できる技術の精度は既に61%にも達していると研究成果を発表しています。
思い浮かべるだけで文字を入力するFacebookの技術、今の精度は61%。
そして、それから1ヶ月もしないでCTRL-labsの買収発表です。数年前からFacebookはこの分野に力を入れていましたが、テスラCEOで有名なイーロン・マスクもこの分野に投資を公表しており、にわかに盛り上がりを見せています。
尖ったテーマに投資するFacebook
Facebookの取り組みは本当に面白い物が多いです。大規模なIT企業でGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)などと、ひとくくりに形容されることもありますが、最新分野への投資に関しては、各社スタンスが結構異なっています。
Facebookは、かなり先を見据えた尖ったテーマに投資している印象があります。まだ他の企業もあまり手を付けてない、できるかどうかわからない分野にも積極的です。
- Google:研究からを商品化まで積み上げていく企業研究者タイプ。まだ理論もツールも世の中にないものなら、自分たちでゼロから1を生み出す(自動運転などの人工知能、量子コンピュータなど)
- Amazon:既に誰かが発明した既存技術を使って商品化し、高速に改善を繰り替えす実践型タイプ(クラウド、音声アシスタント、ドローン、人工衛星インターネット網)
- Facebook:「これは面白い!」と思う未開拓なテーマを探してきて旗振りをし、優秀な技術者の興味を集める。かなり先の未来を先を見据えて投資するタイプ。(AR/VR、スマートグラス、仮想通貨Libra、ブレインコンピューティング)
- Apple:最新分野への投資は控え目。最新の他の企業の取り組みを後から取り入れる。この企業の価値は最新機能があるかではなく、ユーザの使いやすさを磨いていること(Apple Pay, Apple Cash, Apple TV+などはいずれも他の企業が専攻していたものを流用。)
ブレインコンピューティングに投資するFacebookの考え
過去にブレインコンピューティングの取り組みを世の中に大々的に紹介したイベントとして、人々の記憶に残っているのは、2017年のFacebookの年次イベント「F8」です。
このイベントの中で、Facebookがブレインコンピューティングを研究する理由について、時間を割いて説明しています。
Facebookによれば、人間の脳は860億個のニューロンを抱えて、1つ1つが1kHzの処理能力を持っているため、全体として毎秒1Tbpsという、とてつもない高性能なコンピュータの性能をもっていると言います。
しかし、問題なのはその膨大な情報の処理を出力する力が乏しいことです。人が話すスピードは1分間に40wordから60wordで、書くスピードになると、これよりも遥かに遅いです。
そこでFacebookが考えたのは「脳から直接タイピングをしたら、どうなるのか?」という問いです。これが実現すれば、世の中に劇的な変化が現れるとして、数年前から研究を続けています。
現時点では精度にかなり難がありますが、この研究分野が成果を出せば、たしかにFacebookの言う通りに人間の生産性に劇的な変化が現れるはずです。