プログラミングは得意でしょうか
突然ですが、みなさん。英語は得意でしょうか。
このサイトに来る人は実際に米国株を投資している人が多いので、英語も堪能な人も多そうですが、それでは次の質問はどうでしょうか。
「プログラミングは得意でしょうか。」
これを自信を持って「はい」と答えられる人は、そう多くないと思います。私も一応コンピュータ関連の学位もあり、仕事で何年もIT企業の開発チームでプログラムを書いていましたが、一度も自分が得意だと思ったことはありません。
しかし、ゴールドマン・サックス・グループでテクノロジー活用の取り組みを率いてきたR・マーティン・チャベス氏によれば、プロのトレーダーになる人には、英語を話せる能力と同じくらい基本的な能力として、プログラムが自在に書ける能力が求められていると言います。
投資はシンプルで簡単
まず最初に断っておきますが、私の個人的な意見では、個人投資家が投資でリターンを出すために「プログラミング」どころか「英語」すらほとんど不要だと思っています。
個人投資家がアメリカ株でリターンを出すために、やるべきことそんなに多くないからです。
- 収入から、一定額を投資資金として確保する。
- 長期的に見て国債、金、現金に比べてリターンが大きい米国株をメインに投資する。
- どんな銘柄でもいいのでたくさん保有するか、1つでアメリカ株市場に投資できるETFを購入する。
とてもシンプルですね。誰でもできそうなものばかりですが、たったこれだけで素人であっても、世界に何億人もいると思われる投資家の中で平均的な投資成績を残せます。一気に中級者への仲間入りです。
アップルの創業者のスティーブ・ジョブズは何より「シンプルさ」を好んだと言われますが、投資についてもこれくらいシンプルなものが良い気がします。
Simplicity is the ultimate sophistication
.シンプルさは究極の洗練である。(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
投資のプロに求められるプログラミング能力
しかし、プロのトレーダーならば上の3つだけをやっていて人より高い給料がもらえるわけはありません。
なぜなら上の3つのようにルール化された行動だけするトレーダーならば、私ごときのまったく天才から程遠いよくいるプログラマであっても、そのトレーダーの代わりに働くプログラムコードがかけるからです。
そして「トレーダーに何億も払うくらいなら、このプログラムでコストカットしませんか?」と証券会社のボスに進言すれば、ボスは縦に首を振ります。
そして、それに近いことはすでにゴールドマン・サックスで起こっています。
トレーダーを自動売買システムに置き換えたゴールドマン・サックス
2000年のピーク時にはゴールドマン・サックスのトレーダールームに最大600人いた人間のトレーダーは、2017年には2人になっていると言います。前述のマーティン・チャベスによれば、かわりに200人の自動売買プログラムをかけるエンジニアが採用されていると言います。
ゴールドマンサックス、600人いたトレーダーが2人に 急速に進む株式売買の自動化(exciteニュース)
もちろん、このエンジニアは私などと違って、すごくスキルレベルの高いエンジニアだと思われます。
このようなハイスキルの200人のエンジニアを雇うのは、大変ですがそれでも、ゴールドマン・サックスの平均年俸を5,000万だとして、トレーダー600人がエンジニア200人変われば年間200億円の削減効果があります。
プログラムがかける人間が求められる
さて、話が発散してしまったので、そろそろまとめに入りたいと思います。この話はとても示唆に富んでいると思います。
- 人がやっている仕事がプログラムに置き換わる動きは、金融では既に始まっている。
- 金融のような人件費の単価が高い業界ほど、プログラムによる人件費削減効果が高い。(個人的な考えでは単価の高い医者の業務の一部(画像診断)もなどもターゲットになりそう)
- プログラムに置き換わらない人材になるためには、専門知識に加えてプログラミングができる能力が必要。
こうした波がいつ訪れるのかは、業種や国によって全然スピードが違うと思います。
医者の世界では論文を書くためのデータで統計解析をすることが多いですが、最近ではエクセルではなく大量のデータを手軽に統計処理できるRというプログラミングに近いものを習得している医者もいるようです。
また、Googleの肺がんの検知AIは、放射線科医以上の判断性能を持っているとの報告もあります。
Google、研究初期段階ながら放射線科医以上の肺がん検知AIを実装。(NEWS-CARAVAN)
まとめ
今日の記事では、サラリーマン投資家の収入の源泉である「サラリーマン」の収入が、プログラムによって脅かされる未来が来るかも知れないという話をしました。
サラリーマン投資家も楽ではないですね。
本業のサラリーマンでは「専門知識」と「英語」を基本スキルとして求められ、投資家としては資産を運用する金融リテラシーが必要でした。そして、これに将来プログラムに自分の本業を奪われないための、プログラミングの技能も求められるようになると。
つまり、こういうことですね。
- 専門知識:本業のサラリーマン業を遂行するための知識。
- 英語:本業のサラリーマン業の仕事の多くで求められる基本的な英語スキル。
- 金融リテラシー:貯めたお金を運用して増やせる基本的なお金の知識。
- プログラミング:将来もサラリーマン業を続けるために必要になってくる知識。
もはやスーパーマン・スーパーウーマンです。これを読んでいる読者は、サラリーマンや学生をやりながら投資している人を対象にしていますが、その理想形は随分とまたハードルが高いようですね。
あまり肩の力を入れずに、時間を味方につけながら、ゆっくり身につけていくことにしましょう。