中国、米国制裁関税でWTOに提訴
どんよりとした展開ですね。
アメリカは中国からの輸入品に対して9月1日から新たな関税を発動し、中国も関税を引き上げると同時に、アメリカの関税引き上げの行動に対してWTOに提訴すると発表しています。
最近のトランプ大統領は協議の進展を匂わせますが、対立の溝は決して浅くない印象を受けます。
WTOに提訴も解決には時間がかかる模様
中国はアメリカが関税引き上げに踏み切った翌日の9月2日、米国の追加関税に対し、世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。今まで、制裁関税引き上げを互いに繰り返していた状況からしたら、ひとつアクセントがついた手を中国が売ってきたように見えます。
しかし、WTOに提訴しても、関税が景気に与える影響は抑えられないでしょう。WTO紛争解決は異議申し立ての場合も含めると1-2年かかるものが多く、この1-2年は経済にダメージを与えるには十分な時間だからです。
参考PDF:WTOの紛争解決手続(経済産業省) 4.我が国が関与する紛争案件の表を参照
米中協議が長引く理由
また米中の貿易協議がこれだけ伸びている理由に、アメリカ側が要求している中国に対等な貿易条件が、中国にとって絶対に飲めないものになっている可能性が高いです。
今まで、中国企業はアメリカで自由に商売できる一方で、アメリカ企業は中国に参入する際に、中国企業への技術移転を強要されたり、クラウドコンピュータなどの分野ではそもそも参入が出来ないなどの制限がありました。
また、中国政府が重点分野に指定している産業に該当する中国企業には多額の給付金を交付するなどして、他の国の企業との競争を有利に進める施策をとっていました。
米中貿易協議の争点についてはこちらを参照:
トランプ追加関税ツイート背景と、米中貿易協議の争点。
アメリカはこれらの不平等な中国政府の扱いをやめるように要求しています。しかし、中国政府がアメリカの要求受け入れれた場合には、中国企業の成長減速を招き、現時点でも達成が危ういGDP成長目標に未達になるリスクが伴います。
今の中国にはそれは受け入れられません。
というわけで、現実的な貿易戦争の終わり方としては、以下2つが考えられます。
- トランプ政権が、中国への要求を取り下げる
- 米国・中国のどちらか、もしくはその双方の景気が悪くなり、再び貿易戦争の休戦を宣言する
しかし、アメリカの景気が好調な限りトランプ政権が要求を引き下げることはおそらくないでしょう。よって、アメリカか中国のどちらかの景気が目に見えて悪化するまで、貿易戦争が続く恐れが高いです。
米中閣僚級の貿易協議に日程もいまだ組めず
というわけで、米中の対立の前向きな打開策がまだ見えない現状に「どんより」としたものを感じています。
また当初9月初めにも開催されるとの話があった閣僚級の貿易協議は、未だに日程が組めてないようです。先行きは不透明です。
米中が直接お互いに掛け合っている関税の直接的な影響も小さくないですが、もっと大きいのは米中が対立を激化させている先行きの不透明感から個人消費が伸び悩んだり、企業が投資を控えることです。
だからこそ、最近トランプ大統領は盛んに、中国との交渉が順調に進んでいることを匂わせていたように思いますが、関税の発動や日程の合意が取れていないなどの結果だけでみると、どうにも安心できない情勢です。