調査会社のガートナーが先進技術の成熟度をまとめた調査結果「ハイプ曲線2019」を公表しています。
ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表(ガートナー)
これを見ていると、次に世の中を変える技術が見えてくる未来へ地図になっているわけですが、パイプ曲線の見方を紹介した上で、注目している2つのテーマと関連する企業について紹介します。
注目しているテーマだけ先出しすると、1つは自動運転を始めとした移動サービス関連の技術、もう1つはARクラウドという分野です。
ハイプ曲線2019とその見方
ガートナーのハイプ曲線2019を見ていきます。
一見すると、どうやって見たらいいいかわからない図ではありますが、これが読めるようになると、何年後にどんな技術が世の中にあふれるのかが見えるようになってきます。
見ていくポイントとしては次の2点です。
- 発展サイクルのどこに位置するか(どれだけ右に移動できているか)
- その技術があと何年で「生産性の安定期」に入るか。
ガートナーによれば、新しい技術は5段階を経て、世の中に普及するようになります。まず、人々の中で人気が出始める「黎明期」。それから、新しい技術に過剰な期待を寄せる「過度な期待のピーク」。現実を知って、期待がしぼむ「幻滅期」。そして、技術の真の価値を再認識されて世の中に広まる「生産性の安定期」です。上の図では左から右に移動して行くイメージです。
何が右に抜け出し始めたかを見ておくと、これから何が流行るのかを見ることが出来ます。
ちなみに、ちょっと脱線すると私はインターネット関連企業に対する評価もこの5段階を減ると思っています。ITバブル後は「IT企業になんて投資をするもんじゃない」と評価は地に落ちていましたが、近年ではバフェット率いるバークシャー・ハサウェイがアマゾン株を買うなど、評価されつつあります。
詳細はこちらのページの後半をご確認ください:
アメリカ株投資家がはまる「成長の罠」の罠
今後10年でもまだまだ広がりを見せない移動サービス
ガートナーのハイプ曲線には多数の先端技術が並んでいますが、ビジネスになるかどうかの目線で見てみると、一番お金になりそうなのはドローン配送や自動運転車など、運転手なしで物や人を運ぶ移動サービス関連の技術です。
移動サービス関連の項目をハイプ曲線から拾ってみましたが、ちょっと残念なのは、ガートナーによればほとんどの技術は本格実用化には10年以上の月日がかるということです。
技術名 | 説明 | 本格実用化に要する年月 |
---|---|---|
自律走行(レベル4) | 悪天候など一部条件だけ人が運転する自動運転 一部の州で実用済み |
10年以上 |
3Dセンシング・カメラ | 自動運転用のセンサーなど | 2-5年 |
自律走行(レベル5) | 完全自動運転 | 10年以上 |
軽貨物配送ドローン | オーストラリアでは実用化済み | 5-10年以上 |
自律型飛行機/空飛ぶ車 | 空飛ぶタクシー 世界中で実証実験中 |
10年以上 |
ドローンも自動運転も10年以上前から研究されているのに、まだ5年や10年以上かかるというのはどうしたことでしょう。
おそらくですが、これらの移動サービスの実用化に時間がかかるのは、技術の成熟ではなくアメリカ政府の規制の問題です。
規制が発展を阻むアメリカ
まだ技術的に困難なレベル5の自動走行(完全自律運転)はまだ10年以上かかるのはいいとして、本格実用化まで5-10年かかると記載のある軽貨物配送ドローンは、既にグーグルがオーストラリアで商用ビジネスを開始しています。
また、同じ用に本格実用化まで10年以上かかるとしている自律走行(レベル4)は、2018年にはアリゾナ州でGoogleのWaymoが実用サービスを開始しており、Waymoの技術トップCTOはレベル4の自動運転で技術的な障害はもはや何もないと公言しています。
関連記事:GoogleにAmazonも、相次ぐ完全自律型ドローン配送の実用化。
関連記事:グーグルの自動運転Waymoが大きくリード。自動運転開発競争に終止符か。
それでも本格実用化に向けて10年以上かかる理由は、レベル4の自動運転のサービスがアリゾナで開始された理由が端的に表しています。アメリカの州で自動運転の取り組みが実用化されたのは、自動運転に関する規制が緩いのがアリゾナ州だったからです。
同じくグーグルがドローン配送実用化をオーストラリアで行ったのも、オーストラリアのほうが規制が緩かったためです。
つまり、技術的には既にほぼ完成の域に達していながら、政府の規制が問題を阻んでいる現実があります。なので今、自動運転開発企業はアメリカ政府に、至急時代に合わなくなった規制を撤廃するように求めています。
自動運転車の規制障壁「即座に」撤廃を、ウェイモが米当局に要請(ロイター)
中国は地域限定での規制解除に積極的
一方、中国では先端技術を磨いて、世界の市場シェアを奪おうと政府が積極的に画策しているため、地域限定で規制を緩和させることに積極的です。
中国Didiはほどなく自律運転配車を運用開始、2021年までには中国外への展開も狙う(TechCrunchJapan)
まごまごしていると、アメリカ政府の規制のせいで、中国企業に世界の市場を取られる事になりかねません。仮想通貨を使ったフェイスブックの次世代決済システムLibraの取り組みでもそうでしたが、規制する側が技術の発展のスピードについてこれていない現実があります。
移動サービス企業への投資は時期に注意
最後に自動運転開発と配送ドローン開発を行っている主要プレイヤーを記載します。ただし、2019年時点でこれらの企業への投資は早すぎるかもしれません。上のロイターの記事よれば、車の安全性の法律1つとっても、早くても法改正が2025年と見られているためです。
自動運転開発企業
- 1. Waymo (グーグル自動運転開発部門からスピンオフした企業。Alphabet傘下)
- 2. GM Cruise (2016年GMが買収した自動運転システム開発企業。GM傘下)
- 3. Ford Autonomous Vehicles (シンボル:F)
- 4. Aptiv (シンボル:APTV)
配送ドローン開発企業
- 1. Amazon
- 2. Google
だいぶ長くなってしまったので、今回はここまでにします。次回の記事では、まだあまり聞き慣れないARクラウドという分野について扱いたいと思います。
続きの記事はこちら:ARクラウドはデジタル広告の未来〜ガートナー先進技術ハイプ曲線2019を読む。