1月のアメリカの消費者物価は予想よりも高い伸びとなってしまいました。
価格が落ちにくいサービスの品目で根強い価格の伸びが続いていることがわかり、利下げへの期待は下がって、昨晩の株価は下落しています。
この記事のポイント
- 1月の消費者物価の伸びは、予想の以上となった。住居費が伸びた他、車の修理代や保険料が高い伸びを示すなどサービス価格が大きく上昇した。
- 市場の利下げ予想は年内4回に後退した。年内3回の利下げを予想するFOMCメンバーと認識が徐々にすりあってきたのは、不幸中の幸い。利下げ予想の行き過ぎはやや改善された。
予想以上に伸びた消費者物価
1月の消費者物価は、予想していたよりも高い伸びを示しました。
- 前月比:0.3%(予想:0.2%、前回0.2%)
- 前年比:3.1%(予想:2.9%、前回3.4%)
エネルギーや食品などの価格が変動しやすい項目を除いたコア指数でも、概ね予想を上回っています。
- コア前月比:0.4%(予想:0.2%、前回0.3%)
- 前年比:3.9%(予想:3.7%、前回3.9%)
前回よりも前年比の数字は低下してはいるのですが、一方で前月比は上昇しているので単月で1月はインフレ圧力が高まった月となってしまいました。
今月はサービス価格が特に大きく伸びた月でした。
サービス価格の中で大きな割合を占めている住居費については、前月比で年率7.8%のペースで大幅に伸びが加速をしています。
この消費者物価の「住居費」の伸びは住宅価格の伸びを追いかけるように変動しており(下図)、先をゆく住宅価格の伸びはすでに大きく鈍化していることから、「住居費」の伸びはいずれ低下するものと思われます。しかし、一時的とはいえ、1月は嫌な伸び方です。
その他、自動車修理関連の物価が上昇していますが、これは車の買い控えで修理費や保険料が高い伸びが続いてるのでしょう。
すでに車の価格は約2年前から低下しているので、修理費や保険料の価格の伸びもいずれ落ち着くと思われますが、これも最近の物価上昇の圧力になっています。
市場の利下げ予想が後退
最近のこうしたサービス価格の根強い伸びは、FRBに利下げを思いとどまらせるには十分な材料となりそうです。
消費者物価の発表後に、市場の投資家は利下げ予想をさらに後退させています。
不幸中の幸いなのは、金利先物市場の予想が金融政策を決めるFOMCメンバーの見通しである「2024年内の利下げ3回」にだいぶ歩み寄ったことです。
行き過ぎた利下げ予想の修正はその大部分が終わりつつあるので、昨晩のような大幅な長期金利上昇が起こる機会はそう多くないはずです。
さいごに
1月の消費者物価は、思っていたよりも高い伸びを示していました。
10-12月期は住居費がアメリカの消費者物価を押し上げている印象はあったのですが、1月についてはより広い品目で物価が上がっています。
住居費を除くアメリカの消費者物価の伸びを見てみると、10-12月までは前月比でマイナス成長でしたが、今月は年率6.1%にまで大きく伸びています。
だから、FRBが言うように現時点で「利下げを議論できるタイミングではない」というのは分かりました。
3月の利下げはなくなり、5月利下げも今後のデータによっては不透明となりそうです。
1月の消費者物価の結果は残念でしたが、数値を押し上げているのが住居費や車の修理代などの価格がなかなか下がらないサービスの品目であるので、利下げが判断できるほど物価が落ち着くまでにあと何ヶ月かかるかわかりませんが、辛抱強く待つ必要がありそうです。