アメリカの12月の経済指標が落ち着き、早いものでは1月の経済指標の発表が始まりつつあります。
さて、少し気になったのは1月のニューヨーク連銀製造業指数です。予想よりも大幅に悪い結果が出ています。
この数字は変動が大きいので、過剰に反応する必要はありませんが、製造業は相変わらず調子が良くないようです。
この記事のポイント
- NY連銀製造業指数は1月に大きく落ち込んだ。新規受注が低迷しており内容も悪い。
- 製造業の景気が悪化するとS&P500の一株利益にも悪い影響が出る。S&P500に下落圧力がかかることを意味する。
- ただ、他の経済指標を見ていると1月に景気が大きく落ち込んだ形跡は見られない。製造業だけの問題なのか、他に飛び火するのかは追って確認が必要。
1月に大幅に悪化した製造業の景況感
このブログを読んでいる投資家の方の中には、アメリカが今の景気サイクルでどこに位置しているのかをざっくりと把握するためにISM製造業指数を見ている人もいると思います。
そのISM製造業指数よりも半月ほど先に発表されて、製造業の景気をいち早く知ることができるのがニューヨーク連銀製造業指数です。
ニューヨーク連銀が1月3日から10日にニューヨーク州の製造業の企業に対して行った、景気調査の結果が発表されました。
ゼロを超えると前月よりも景気が拡大していると解釈する数字ですが、予想以上に大きなマイナスに見舞われています。
- 予想:-4.5
- 結果:-43.7
結果を見たときには、何かの見間違いかなと思うほど大きなマイナスでした。グラフを見ても、1月の急降下ぶりがよくわかります。
今回の景況感の低迷は、新規受注の低迷にありそうです。今月は新規受注はなんと言っても悪かったです。
ただ、注意したいのはNY連銀製造業指数は変動の大きな数字だということです。おおむねISM製造業指数と同じように動く傾向はあるのですが、ISMではもう少しだけマイルドな低下になっている可能性もあるので、過剰な反応はしなくていいと思われます。
また、ニューヨーク州だけに見られる低迷かもしれないので、今月は他の連銀の同様な景況感調査も確認したいと思います。
株への影響
さっきから製造業の景気がどうと話をしていますが、米国株にはどのような影響があるのか触れておきます。
基本的には製造業の景気が悪くなるときには、S&P500の利益は悪化します。次のグラフはISM製造業指数とS&P500の一株利益の前年比をくらべたものですが、両者は似たような動きをしていることがわかります。
NY連銀製造業指数が示すようにこれから製造業の景気が悪くなるなら、利益の伸びはアナリストたちが期待する通りにならないかもしれません。
利益が伸びないなら、2024年には利下げがあると言えど株価の上昇は抑えられてしまいます。
利益が伸びないどころではなく、もしも悪化に向かうようなら株価下落になる恐れもありますが、それはISM製造業指数が大きく悪化した場合に再度考えることにしましょう。
製造業以外の景気について
さて、ここまでは1月の製造業の景気は悪いかもしれないという話をしました。
しかし、それでアメリカの景気が大幅に悪化したと結論づけるのは、まだ早いです。製造業以外では、1月に景気が大きく悪化している様子が見られないからです。
クレジットカードの使用量から推定した消費データを見てみると、1月の消費は前月よりも好調を維持しているように見えます。
ダラス連銀が発表している毎週の経済の強さ(ウィークリー・エコノミック・インデックス:WEI)を見ても、アメリカ経済が1月に沈んでいる様子は見られません。
というわけで、製造業は悪かったとは言え、これがアメリカの消費者や雇用にまで低迷が広がるかは見極める必要がありそうです。