今年最後のアメリカPCEデフレータの発表がありました。FRBも注目しているアメリカのインフレ指標です。
発表された11月の数値を見てみると、インフレは順調に2%に向かっている様子が見られます。
もうしばらくはインフレの心配はいらないと思います。あとはいつ利下げが開始されるのかが議論になるはずです。
この記事のポイント
- 11月のPCEデフレータでは、アメリカの順調にインフレ鈍化が進んでいることが確認できた。
- この半年間のPCEコアデフレータの伸びは年率1.9%のペースであり、FRBの目標のインフレ率2%の実現に向けて進んでいる。
- 2024年5月には前年比で2%にかなり近づいていることが予想され、5月の利下げは現実的になってきた。ただし、市場が予想する3月利下げはまだ一段のインフレ鈍化が必要。
順調なインフレ鈍化が続くアメリカ
PCEデフレータの結果を見ていきますが、今月の結果はかなり良かったと思います。
- PCEデフレータ:前年比+2.6%(予想:2.8%)
- PCEコアデフレータ:前年比+3.2%(予想:3.4%)
価格変動の大きなエネルギー価格と食品を除いたPCEコアデフレータはまだ前年比3.4%で、インフレ目標の2%にまでは距離があると思われるかもしれません。
しかし、以下の前月比の結果も合わせてみると11月単月のインフレの伸びは小さく、PCEデフレータの伸びは十分小さかったことがわかります。
- PCEデフレータ:前月比-0.1%(予想:0.0%)
- PCEデフレータ・コア:前月比+0.1%(予想:0.2%)
PCEコアデフレータの前年比がまだ少し高いという話をしましたが、この前年比を押し上げていたのは2023年前半の伸びです。2023年後半になってからは、各月のインフレの伸びは年2%を下回るペースが続いています。
9月には一時的にPCEコアデフレータの伸びが高くなりましたが、それでもこの半年の伸びは年率1.9%ペースでかなり順調な低下が続いています。
3月の利下げは可能か
先日、過去にアメリカで利下げが開始される時点ではたいていPCEコアは2%程度だったという話をしました。
次の図は過去の利下げ時に、インフレ率の伸びと失業率の悪化がどれだけの値になっていたかを示したものです。PCEコアデフレータはたいてい2%まで落ち着いている段階で、利下げが行われていることがわかります。
ここに11月時点の失業率とPCEコアデフレータのデータを打ち込んでみると(上図の青い点)、今は利下げを始めるにはまだわずかにインフレ率が高いという判断ができます。
一方で、この半年のPCEコアデフレータの伸びは先ほどいったように年率1.9%で推移しているので、このペースが続くなら2024年半ばにも前年比でPCEコア2%が達成できそうです。
2024年半ばのFOMC(FRBが政策金利を決める会議)の予定を調べてみると5月1日に予定されていて、ここでの利下げは視野に入ってきたと思われます。
ただ、まだ利下げができるか微妙なのはその1つ前の2024年3月20日のFOMCです。市場は2024年3月の利下げをかなり高い確率で予想していますが、個人的にはまだ少し半信半疑です。