アメリカはちゃんとインフレ低下の道を辿っているようです。アメリカの求人件数の発表がありましたが、予想以上に低下しています。
これはFRBの金融引き締めがインフレ抑制に働いている良い証拠です。
代償として2024年は景気後退になるかもしれませんが、次の景気後退で大規模な経済刺激策をしなければ、1970年代のような高インフレを繰り返す時代の再来は防げる可能性が出てきていると思います。
この記事のポイント
- 10月の求人件数は予想以上に低下していた。まだ、コロナ前よりも求人は多いが、少しずつ求人件数の過剰が解消されつつある。
- 求人件数低下は賃金の伸びを抑えて、インフレの長期化を防ぐ。それなら、1970年代のような高インフレで株の実質リターンが出ない時代の再来を防げる。
予想以上に低下していた求人件数
米国株だけ見ていると大きな変化はありませんでしたが、昨晩は米国債が大きく買われました。
その原動力になったのは、アメリカの求人数の低下です。昨晩発表された10月のアメリカ求人件数は予想を大きく下回っていました。
- 予想:942万人
- 結果:873万人
- 前回:955万人から935万人に下方修正
これはアメリカの景気のことを考えれば、経済成長の鈍化につながる悪いニュースと捉えられます。しかし、インフレ抑制のためには、とても良い数字だと思います。
インフレが抑制が進んでいるなら、インフレ対策のために続けているFRBの金融引き締めも終わりが近いはずで、そうなればあらゆる資産の価格上昇につながる利下げが見えてきます。
残念ながら、昨晩はインフレ抑制(利下げ期待)のプラス材料と、景気鈍化懸念のマイナス材料の両面を受けて米国株はほとんど値動きがありませんでしたが、景気鈍化が価格に関係ない米国債は大きく買われました。
求人件数の見方
求人件数だけを見ていると、コロナ前の2019年に比べて現在のほうがだいぶ求人が多いように見えます。
しかし、アメリカはこの4年間で人口が増えていることを考慮しないといけません。
そこで、失業者に対してどれだけ求人が多いかを調べてみたのが次のグラフです。
どうでしょうか。まだわずかに現時点のほうが高いですが、だいぶコロナ前の状態に近づいていることがわかります。
インフレ再来は防げるか
FRBは今回の結果にほっと胸をなでおろしていることだと思います。
今から50年前の1970年代のアメリカでは、リセッションを経ても雇用の過熱を防げずに賃金のインフレが起こり、10年におよぶ高インフレの時代を招いてしまいました。
この様子なら、(次のリセッションで再び大規模な景気刺激策を打たなければ)1970年代の再来は防げそうな気配を少しずつ感じます。
インフレの再来を防げるなら米国株投資家にとっても良いことです。
1970年代の株のリターンはインフレを考慮すると10年間でマイナスの成績であり、苦しい時代となっていました。株式投資家としては、このひどい時代は繰り返してほしくありません。
(上図を見る限り、本当にインフレが再燃するなら、その場合にはゴールドやコモディティなどへの不慣れな投資先も検討する必要がありそうです。)
というわけで、10月の求人件数は米国債投資家にとって良い結果だっただけでなく、長期の米国株投資家にとっても悪くない内容だったと思います。