最近では「製造業の景気はすでに底打ちした」という見方も見聞きします。
たしかに復調している様子は見られますが、私はまだ楽観的にはなれていません。
その根拠として、昨日はニューヨーク連銀製造業指数の内訳がさえない点を見ていきましたが、ここでは鉱工業生産指数という別の数字を見てきたいと思います。
この記事のポイント
- 鉱工業生産指数は前年の数字がマイナス成長に落ち込むと、過去に景気後退が起こっていることが多い。
- 鉱工業生産指数は2023年6月に一時的に前年比マイナスに落ち込んだが、7月と8月はプラスに浮上した。
- しかし、9月以降に再びマイナス成長に戻ると、10月はさらにマイナス幅を深めつつある。傾向としては悪化しているように見える。
鉱工業生産指数は不調
鉱工業生産指数は鉱業(mining)、公益事業(utility)、製造業(manufacturing)の生産動向を数値化したものです。
ざっくりいうと、この数字が強いとモノづくりが好調という感じです。
私は普段から鉱工業生産指数を見ているわけではないのですが、景気拡大期が終盤になってくると毎月確認するようにしています。
理由は、リセッション(景気後退)になるとこの数字が前年比マイナス成長になるという特徴があるからです。
そして、2023年はどうなっているかというと、現時点では前年比マイナス成長に沈んでいます。
このマイナス成長は6月にまず見られました。
しかし、この時のマイナス成長はまだ一時的でした。
そのあと第3四半期にアメリカは強い消費とともに景気が回復したこともあり、鉱工業生産指数も7月・8月とプラス成長に戻る場面が見られています。
その景気の強さも一巡したのか、9月と10月は再び鉱工業生産指数は下降しはじめて現在にいたります。
問題はこのグラフが右肩下がりに見えてることです。
私はこの上のグラフから、製造業の景気は底打ちを感じることはできません。細かくいうと製造業は好調で、鉱業や公益業が不調なのかもしれませんが、全体的にやはり悪化しているように見えます。
たしかに、鉱工業生産指数がマイナスになっても景気後退にならなかった例は過去にあります。現在のマイナス幅も過去の景気の底に比べれば、まだかなり浅いです。
鉱工業生産指数だけを見れば景気後退を回避できる可能性も十分にまだ感じますが、傾向としては景気減速が続いているのだろうと思います。
そして、鉱工業生産指数の前年比がマイナス成長になっているということは、リセッションのシグナルが点灯するくらい弱い景気と言えそうです。