昨晩発表された小売売上高を見てみましたが、なんだか9月もアメリカの消費は良かった模様です。
なるほど、どうにもアメリカの景気はまだ強いように見えます。
景気後退への道のりが本当に遠いですね。それは良い面ばかりではなく、金融引き締めが長く続くことを意味します。引き締めの長期化が続くなら、ハードランディングへの可能性はあがると思います。
この記事のポイント
- 9月のアメリカの小売売上高は予想を上回るペースで成長していることがわかった。ガソリン代だけではなく、幅広い項目で売上成長が見られる。
- 2022年から利上げを続けているがアメリカの消費はまだまだ十分に鈍化したとは言えない。強い消費が長引くほど金融引き締めが長続きして、ハードランディングの可能性は上がる。
小売売上高は予想を大きく超える好調さ
9月の小売売上高が発表になりました。
9月の小売売上高は予想を大きく超えて、またしてもアメリカの消費は強いと思わせる結果になりました。
- 予想:前月比+0.3%
- 結果:同+0.7%
- 前回:同+0.6%から+0.8%へ上方修正
これは困りましたね。景気が強いこと自体は問題ではないのですが、これだけ強いとインフレが強まるのではないかとの思いから、さらなる利上げが脳裏をよぎります。
利上げは株や国債やゴールドまであらゆる資産の価格に悪影響なので、これ以上やられると困ったことになります。
9月まではアメリカで原油価格が上昇していたので、ガソリン・ステーションの売上が増えているのかと思いましたが、そうではないようです。
- 全品目の小売売上高:前月比0.7%
- ガソリンステーションを除く小売売上高:前月比0.7%
上のようにガソリンステーションを除いても、小売売上高の成長率は変わりません。
内訳をざっと見ていくとガソリンステーション前月比+0.9%、レストラン前月比+0.9%、自動車関連前月比+1.0%、オンラインストア前月比+1.1%、その他店舗前月比+3.0%と軒並み成長率が高いです。
ただ、このアメリカの9月の小売売上高の成長はどうも解せない点が多いです。
失業率は大きく増えていないものの、最近では賃金の上昇がかなり鈍くなっていたはずです。
また、最近ではフルタイム労働者が削減されて、パートタイムの雇用が増えている傾向もあります。それなのに、消費は以前よりも活発化するものなのでしょうか。
見ているデータの信ぴょう性がかすむのであまり言いたくないのですが、ひょっとすると季節調整がうまくいっていない恐れもあります。
季節調整をかける前のデータでは、ホリデーシーズン明けの1月から2月の次に消費が落ち込みやすいのが9月です(下図)。
今年も季節調整前のデータでは9月は8月に比べて大きく小売売上を落としていますが、季節調整がかかりすぎて高い成長率になっているのかもしれません。
その場合は、もうしばらく様子を見て本当に消費が強いのかを判断することになりそうです。
さいごに
ともあれ、9月の小売売上は前月に続きとても強かったという結果になりました。
そろそろ2022年からの利上げの効果がアメリカ経済にやってくるはずなのですが、まだその影は感じられませんでした。
この結果を受けても市場の政策金利の引き上げ予想はそれほど大きく変わりませんでしたが、当面今の高い政策金利が据え置かれると覚悟した投資家もいたはずです。
今回の景気サイクルでは消費者の懐が温かい状態から始まったためか、景気はなかなか弱まらず、金融引き締めが長いこと続いています。冒頭でも話しましたが、引き締めが長引くほどアメリカ経済のソフトランディングは難しくなるはずです。