9月のアメリカの雇用統計が発表になりました。
結果は、一見すると雇用者が増えていて景気が良いようにも見えますが、調べれば調べるほど雇用のもろさを感じるような内容でした。
景気後退がすぐに来るような印象はないですが、今後アメリカの雇用は弱まっていくだろうと感じる雇用統計でした。
この記事のポイント
- 9月の雇用者の伸びは予想を大きく上回ったが、詳細を見ると雇用の弱さが見えてくる。
- フルタイム雇用者は減少し、パートタイムの雇用が大きく伸びている。またパートの副業をしている労働者も増えている。
- ただ、失業者の増え方はゆっくりなので、景気後退があるなら2023年内ではなくやはり2024年になりそう。
雇用者は予想を大きく上回ったが・・・
9月の雇用統計の数字を早速確認していきます。
- 非農業部門雇用者数:33.6万人(予想16.6万人)
- 失業率:3.8%(予想3.7%)
- 平均時給:前年比4.2%(予想4.3%)
これを見ると雇用者数が大幅に増加して雇用は思ったよりも強いのかなと思った一方で、失業率と平均賃金は予想より悪く雇用の弱さも垣間見える結果になっています。
アメリカの雇用は結局強いのでしょうか。それとも弱いのでしょうか。
何が起こっているのか明らかにしてくれるのは、次のデータです。フルタイムの雇用は減り、パートタイムの雇用は増えています。
- フルタイム雇用者:2.2万人減
- パートタイム雇用者:15.1万人増
このあたりに企業と消費者の厳しい懐事情が見え隠れてします。どうも企業はフルタイム労働者の人員削減をして、パートタイムを増やしていると言えます。
そして、調べてみると今回のようなフルタイム雇用を削減してパートタイムを増やす動きは、7月から3ヶ月連続で見られる動きのようです。
これは明らかに雇用の弱まりを感じるデータです。
パートの副業も14.8万件増
今月はフルタイムで働きながら、空き時間でパートもする労働者も大きく増加しました。
- フルタイム雇用とパートタイムの兼業者:前月比15.1万人増
そしてすでにこういう労働者は470万人を超えて、過去の景気サイクルのピークの数にかなり近づきつつあります。
こうしたパートの兼業が増えているところを見ると、人々は生活を維持するために本業以外にパートを増やして姿が見え隠れします。
しかし、こういうパートを増やす動きもどこかで限界がきます。そうなると次には仕方なく消費を減らすことになるはずです。
ここにもアメリカの雇用の弱さや、景気減速の予兆を見ることができます。
景気後退は2024年がメインシナリオ
アメリカの雇用は今までのように盤石で強いわけではなくなってきたようです。さて、そうなるとアメリカの景気後退は近いのかが気になるところです。
ただ、雇用の弱まりは見られるものの、景気後退にはまだ少し距離がありそうです。
景気後退入りを見分ける方法にはサームルールというものがあり、このルールでは直近3ヶ月の失業率平均が過去12ヶ月の最低失業率を0.5%以上上回ると景気後退に入ったと見まします。
このルールに照らし合わせると、直近3ヶ月の失業率平均は3.7%まで上がってきましたが、まだサームルールの基準となる3.9%には届いていません。
サームルールで景気後退を判断するには直近3ヶ月の失業率平均であと0.2%上昇すればいいのですが、最近の失業率の上昇局面でも2〜3ヶ月で0.1%分しか増えていないので、このペースがあと2ヶ月〜4ヶ月続かないと景気後退入りの水準は超えません。
そうこうしているうちに2023年も終わるので、2023年内の景気後退入りは今のところ可能性は低いのかなと思います。
メインシナリオはやはり2024年の景気後退になるはずです。