8月の消費者物価が発表になりました。
今回の消費者物価には、良い材料も悪い材料も見られました。
今までアメリカの物価を押し上げていた住居費の伸びが大きく鈍化した一方で、最近では原油価格をはじめエネルギー価格が上昇しており消費者物価にも早速その影響が出ているようです。
この記事のポイント
- 8月の消費者物価は予想を上回る伸びを見せた。エネルギー価格の上昇が要因。
- 一方で、住居費の伸びが大きく低下したことはインフレ鈍化に向けて良い兆候。
- エネルギー価格の上昇が本格化する前にアメリカでリセッションが来て、インフレを抑えられるかが今後のポイント
予想以上に上昇した消費者物価
8月のアメリカ消費者物価は予想を上回る結果になりました。
- 前月比:0.6%(予想:0.4%)
- 前年比:3.7%(予想:3.6%)
ちなみに、価格変動の大きなエネルギーと食料品を除いた物価の変動(消費者物価コア)も予想よりも上回っています。
- コア前月比:0.3%(予想:0.1%)
- コア前年比:4.3%(予想:4.3%)
でも、今月のエコノミストの予想はちょっと低すぎたのでしょう。予想値だったコア前月比が0.1%の伸びというのは、12ヶ月続くと年間1.2%のインフレのペースです。
さすがにこれはハードルが高すぎました。数日前に書いたブログでも、消費者物価は予想を上回るかもしれないと書いた通りでした。
エネルギー価格が物価を押し上げた
以下のグラフで消費者物価(青線)を見てみると、過去1年続いたインフレ鈍化のトレンドが小幅に反転し始めたように思います。
これは最近の原油先物価格などのエネルギー価格の高騰が原因です。
この影響を受けて、ガソリンなどのエネルギー商品(Energy commodities)の価格は前月に比べて一気に10%以上も上がっていました。
これは心配の種ではあります。
思い返すと、世界金融危機前の2008年も原油価格は上がっていました。この時は、リーマンショックとともに市場では原油先物から資金が抜け、実体経済では景気低迷から原油の需要が減って、原油価格は急落しています。
今回もリセッションや何かのショックが起これば、原油の高騰は解決するはずです。
私はアメリカはちゃんとリセッション入りすると思っているのですが、最近の原油価格の上昇が本格的に問題になる前に不況がやってくるかどうかだけが心配です。
住居費の伸びは多く鈍化
一方で、今月の消費者物価で見られた良い兆候にも目を向けたいと思います。
下のグラフで一目でわかるのですが、長くアメリカの消費者物価を押し上げていた住居費の伸びが大きく鈍化しています。
かなり、いい感じではないでしょうか。
住居費の伸びさえなくなれば、アメリカの物価は大きく下がるはずです。試しに、もしも消費者物価の集計から住居費を除くと最新のインフレ率は1.9%となります。
住居費はまだしばらく鈍化するはずなので、残る問題はエネルギー価格となりそうです。
現時点で下図のように市場の投資家たちは特にもう利上げは必要ないと見ているようですが、エネルギー価格の上昇が止まらずリセッションもなかなか始まらないようだと、まだ利上げはあるかもしれません。
しかし、いずれにしろ利上げはあと数回だと思うので、私は長期国債を保有してインフレ低下とリセッションに気長に待つことにします。