アメリカのインフレ基調は鈍化していると思っています。
しかし、2023年から住宅価格が上昇したり最近では原油価格が上がったりと、インフレ再燃の種のようなものがいくつも見られるのは気になるところです。
この記事のポイント
- アメリカではインフレ率は鈍化傾向が続いている。
- ニューヨーク連銀のインフレ基調のデータでも鈍化の継続を示唆。
- しかし、住宅価格に加えて、原油価格まで上がり始めた。原油価格は比較的早くインフレ指標に反映される上に、あらゆる価格に波及するので動きに注意。
インフレ低下トレンドは続く
まず、大きな流れとしてアメリカのインフレは今も鈍化のトレンドが続いていると思っています。
次のグラフは、FRBが注目しているとインフレ指標のPCEデフレータと、その中から価格変動の大きなエネルギーと食料品の項目を除いたPCEコアデフレータの前年比をグラフにしたものです。
これらは程度の差こそあれ、最近は鈍化が続いているように見えます。
また、昨日ニューヨーク連銀は7月分のインフレ基調のデータを発表しましたが、これを見ても順調にインフレ率は低下しているように見えます。
インフレ基調(Multivariate Core Trend)の数字は前年比2.8%にまで低下していて、このインフレ基調通りならアメリカのインフレはかなり落ち着いてきていることがわかります。
また、インフレ基調のグラフ(上図の青線)もまだ低下を続けているので、インフレ低下トレンドは続いているように見えます。
住宅価格と原油価格は上昇
しかし、最近では気になる動きがないわけではありません。具体的には次の2つがインフレ再燃の不安要素になっています。
- (1)住宅価格の上昇
- (2)原油価格の上昇
すでに毎月のように言っているのですが、2023年になってからアメリカの住宅価格が再上昇しているのはどうも不気味です。
それでも、住宅価格の上昇は、インフレ指標に反映されるまでにかなりの時間がかかるのでFRBの金融政策にすぐに影響は出ないと思います。
しかし、一方で、原油価格の上昇はさすがに少しまずいです。原油価格の上昇はすぐに物価指数に反映されるだけでなく、あらゆるものに物価高が波及する恐れがあります。
その原油価格が3月から上昇が続いているのは、少し嫌な感じです。
原油高の背景にあるのはサウジアラビアの原産やロシアの輸出減少、それに加えて去年まで大量に売り出していたアメリカの石油備蓄が今年はペースダウンしたことです。2022年のアメリカの石油備蓄の減少ペースはかなり急だったので(下図)、さすがにこのペースはいつまでも続きません。
つまり、原油の供給が減っていて原油高になっているようです。
中国やヨーロッパ経済の景気が減速しているので、今後は世界の需要減で原油価格が下がる可能性はありますが、まだ大きな需要減少は訪れていないようです。
原油の動きに関しては少し要注意かもしれません。