アメリカ経済は今は好調ですが、その先にはハードランディング(不況)が待ち受けていると思います。
このブログでは1年ほど前から「2023年にアメリカは景気後退になる」と言ってたのに、その時期が2024年になりそうなのは悔しいところですが、景気の悪い時期がいずれやってくることはまだ疑っていません。
本当はもっと早く不況が訪れていたはずなのになぜ遅れているか、それによりどんな変化が起こるかを書いておきたいと思います。
この記事のポイント
- おそらく2023年3月の銀行不安をきっかけにアメリカは景気悪化に向かうはずだったが、FRBの救済で時期が遅くなっている。
- しかし、FRBは景気後退を遅らせることはできても回避できたことはない。
- 景気悪化の時期を遅らせた分、より大きな利上げが行われた。この影響で、ソフトランディングではなくハードランディングになる。
アメリカの景気後退予想
今さらの話ですが、シリコンバレーバンクで揺れた2023年3月で本来ならアメリカはソフトランディング(浅い景気後退)に向かうはずだったのではないかと思います。
話は昨年2022年末に遡りますが、市場が急速に利上げ停止と利下げを折り込む時期がありました。
下図は2年国債利回りとFFレート(政策金利)のグラフですが、2年国債利回りがFFレートを下回ると市場は利上げ停止や利下げを予想していることになります。
その後、2023年2月に一旦はこの「利下げのサイン」は消えるのですが、2023年3月にシリコンバレーバンクが破綻してからはずっと「利下げサイン」は点灯したままです。
市場の見方が正しいなら、本当ならそろそろアメリカ経済は音を上げておかしくない時期に来ているはずです。
しかし、アメリカ経済は持ちこたえてるどころか、最近は景気が加速している印象すらあります。これは何が起こっているのでしょうか。
FRBの延命措置
3月のシリコンバレーバンク以降のアメリカで景気が加速している要因は、FRBの緊急プログラムで資金が供給されているからだと思います。
2023年3月に始まった救済プログラムで多くの現金が銀行システムに供給されています。これはリーマンショック前やコロナ前に見られたレポ市場のドル不足解消のための措置と比べても大きな規模です。
他にも様々な緊急プログラムでFRBは大量にドルを供給しており(下図)、それがアメリカ経済を延命させているのだろうと思います。
ハードランディングに向かっているアメリカ
忘れてはいけないのは、歴史の中でFRBは景気後退の時期を遅らせることには何度も成功してきましたが、景気後退を回避できたことはありません。
今回も不況の訪れが遅れただけで、いずれその時はやってくるのだろうと思います。
問題なのは不況が遅れた分、大きなダメージを負うことです。
本当なら2023年3月に浅いリセッションが起こっても不思議ではなかったのに、浅いリセッションを先延ばししたことによって、インフレ抑制のためにさらに大きな利上げが必要になりました。
このことで次の景気後退はより深く長いものに変化するはずです。
3月のシリコンバレーバンク破綻のときには「今の銀行不安はリスク管理がでてきない一部の銀行だけの問題だ」と言われていました。しかし、次に銀行や証券会社などの金融機関が問題になるときに渦中にいる銀行は、3月時点よりも確実に裾野が広がっているはずです。
また、一般的には逆イールドと同じくらいの期間で景気後退期の期間が訪れると言われています。
FRBがアメリカ経済を延命させればさせるほど、長くて深いハードランディング(不況)に向うはずです。