アメリカの雇用統計を見ていたのですが、インフレ沈静化に向けて進んでいる印象を受けました。
この記事のポイント
- 失業率はやや上昇して平均時給の伸びも予想下回るなど、雇用が弱まっている様子が見られた。
- 失業率は上昇したが、まだリセッションに突入するような状況ではない。2023年内のリセッション入りは依然として確率は低そう。
雇用の弱まりを感じるデータ
8月のアメリカの雇用統計はインフレ鈍化のためには悪くない内容でした。
- 非農業部門雇用者数:18.7万人(予想16.5万人)
- 失業率:3.8%(予想3.6%)
- 平均時給:前月比+0.2%(予想+0.3%)
雇用者数は予想よりも上回ってしまいましたが、失業率は悪化して平均時給の伸びも緩やかなペースとなるなど、強すぎる雇用が改善されている印象を受けます。
また、雇用者数は予想よりも伸びていると言いましたが、当日発表される雇用者数はあまり気にしなくていいだろうと思います。どうせ来月と再来月に下方修正されるからです。
次の表は2023年に下方修正された非農業部門の雇用者数の一覧ですが、すべての月で下方修正されています。
特にひどいのは6月のデータで、発表時には20.9万人増だったのに、2ヶ月連続で下方修正が入って最終的に半分の10.5万人にまで下げられています。
だいたいの感触として雇用者数の伸びは鈍化しているなと捉えておけば十分だと思います。
失業率の上昇
今回の雇用統計で少し気になったのは、失業率の上昇です。
アメリカの景気も雇用もまだ強いと思っているのですが、人々が労働市場に帰ってきたからなのか失業率は上昇しています。
過去のデータを見てみると、直近3ヶ月の平均失業率が1年間に記録した失業率よりも0.5%分上昇したタイミングでアメリカはリセッションになっていることが知られています。
8月に失業率が上昇したとなると、現時点でアメリカはどの程度リセッションに近づいているのか気になるところです。
そこで直近3ヶ月平均の失業率を調べてみたのですが、6月から8月までの失業率の平均は3.63%でした。
過去1年の最低失業率3.4%からは、まだ0.23%ポイントしか上昇していないので、やはりまだアメリカのリセッション入りにはしばらく時間がかかりそうです。
上のグラフを眺めている限りは、過去3ヶ月の平均失業率がリセッション入り水準3.9%(3.4%+0.5%)を超えるのは、やはり2024年頃になるのではないかと思います。
まとめ
ここでは8月のアメリカの雇用統計を見ていきました。
失業率は低下し、平均時給も(少なくとも8月単月は)インフレを警戒するような伸びではなかったため、インフレ退治を目標にしている今のアメリカにとっては安心できる内容だったと思います。
失業率が予想外に上昇しましたが、今のところはまだリセッション突入には距離がある状況で、来月以降も失業率が上昇するようなら警戒すれば良いと思います。
というわけで、現時点では景気悪化に強い国債よりも景気拡大に強い株のほうが分がある状況となっているようです。