アメリカの7月の求人件数の発表がありました。
エコノミストの予想以上に求人件数は減っていました。市場は雇用をこれ以上締め付ける必要が減ったと考えたのか、11月の追加利上げの予想を撤回する動きが見られています。
この記事のポイント
- 7月のアメリカ求人件数は予想以上に低下した。これにより、市場は11月の追加利上げの予想を撤回し始めた。
- ただし、コロナ前に比べて求人件数が多い状況は年末まで改善されず、年末まで目立った失業率の上昇はない模様。
予想以上に低下していた求人件数
冒頭でもお話ししましたが、エコノミストが予想していたよりも求人件数は低下していたようです。
- 予想:950万人
- 結果:883万人
- 前回:958万人から917万人へと下方修正
求人件数は2022年3月をピークに低下が続いていますが、今月は予想よりも少し多めに求人件数が下がったことになります。
また同時に発表された米国の離職率はコロナ前の水準に戻っています。
これは積極的に職を離れる人が減っていることを意味します。今までは求人件数が多いことを背景に高い賃金を目指して転職をする人が多かったのですが、こうした動きは沈静化されたようです。
これなら賃金上昇のペースも次第に落ちていくだろうと安心した投資家の人も多いと思います。
11月の利上げ予想は撤回の動き
今回予想以上に雇用が弱まっていたことを受けて、投資家の間では「11月の利上げはいらないのではないか」と考え直す動きが広がっています。
利上げ予想の撤回に喜んだ米国株は幅広く買われる展開になっています。
実は予想外の低下ではない求人数の現象
エコノミストや多くの投資家にとっては求人数の減少はサプライズだったかもしれませんが、求人をいろんなデータで確認している人にとっては、今回の発表はそれほど意外なものではありませんでした。
というのも、Indeedに掲載されている求人件数は既に8月半ばまでの分が発表されているのですが、それと全く同じ結果になっているからです。
上のグラフを見ていると、今まで政府発表の求人件数はやや上振れしていたものが、今月になってIndeedの求人件数に歩調を合わせるように調整が入ったもようです。
このIndeedの求人件数がコロナ前の水準に戻るには2024年1月以降となっているので、パウエル議長の言うような長期トレンドを下回るような経済や雇用が実現するのは恐らく2024年になってからになるのではないかと思っています。
というわけで、7月の求人件数の予想した振れはインフレ抑制のためには良いニュースでしたが、まだまだ物価2%への道のりはしばらく続くと思われます。