2023年の年始から私はアメリカの景気の低迷と米国債の利回り低下を予想していました。
その予想はどちらも今のところ実現していないですが、最近の銅の価格を見ていると市場も世界の景気低迷と国債の利回り低下を予想してるように見えます。
この記事のポイント
- 銅の価格は、世界の経済は今後下方に向かうことを示している。
- また、銅が示すほど米10年国債は買われていない。
- 銅の動きを見る限り、FRBの金融引き締めさえなくなれば、米国債は買われる動きが起こるはず。
銅の価格から世界経済の見通しを調べる
世界の景気がこれから良くなっていくのか、悪くなっていくのかを見るには銅の価格を見ると良いという話があります。
シンプルに言うなら、銅の価格が上昇しているなら世界経済は上向き、下がっているなら経済は下向きというものです。
以下は過去約10年の銅の価格のグラフですが、銅の価格は2022年大きな下落と部分的な回復ののち、2023年から再び低下しているように見えます。
このグラフが言っていることをそのまま捉えるなら、景気の先行きは2022年後半に回復したものの再び暗雲が立ち込めているということになります。
ドルの為替の影響を取り除くと
さて、ここまでの議論では少しまずい点があります。
先程はドル建ての銅の価格のチャートを見ていたので、銅本体の価格だけではなくドルの為替の影響も含まれた値を見ていたことになります。
そこでドルの影響を差っ引くために、先程の「ドル建ての銅価格」を「ドル建てのゴールド価格」で割った値も見てみて、やはり景気は下向きになっているのか見てみたいと思います。
早速調べてみたのですが、「ドル建ての銅価格」を「ドル建てのゴールド価格」で割った値のほうが、むしろ近年は大きく低迷していることがわかりました。
銅が景気の先行きを表しているという見方が正しいとするなら、銅の価格を見ても、銅÷ゴールドの値を見ても、どちらも世界の景気は下方に向かっていると言えそうです。
アメリカ10年国債利回りは上がりすぎている
「銅÷ゴールド」の話をしたついでに、もう1つだけ別の話をしたいと思います。
実は、「銅÷ゴールド」はアメリカの10年国債利回りと同じような動きをすることが知られています。
下図で示したように、過去10年間くらいのほとんどの期間で「銅÷ゴールド」と「アメリカ10年国債利回り」の動きは一致しています。
しかし、この1-2年は米10年国債の利回りが上がりすぎて、「銅÷ゴールド」との連動が失われているように見えます。
恐らく「銅÷ゴールド」と「アメリカ10年国債利回り」のどちらかの動きが間違っているはずなのですが、私は通常と違う動きをしてるのは「アメリカの10年国債利回り」のほうだと思っています。
今回のアメリカの景気サイクルでは、そもそも利上げのタイミングが遅れて、2023年8月現在もFRBは利上げの可能性を残すコメントをし続けて金利を高く保とうと力を加えているため、「アメリカの10年国債利回り」は市場まかせの自由な値になっていないと考えているからです。
一方で、銅は電気自動車などのクリーンエネルギー用途で需要が増える背景があるにも関わらず価格が下落していることから、投資家の景気への懸念が反映されていると思います。
というわけで、FRBの金融引き締めが終わりさえすれば、米国債はもっと買われて利回りが低下する動きがあるだろうと考えています。