7月の消費者物価は投資家にとって、望ましい結果になりました。
大きなサプライズがあったわけではありませんが、順調にインフレは鈍化していることが確認できています。
この記事のポイント
- 7月の消費者物価は予想をわずかに下回る伸びを記録した。
- (ヘッドラインでは)前年比は前月よりもわずかに上昇したが、これは前年7月のデータがデフレ的だったためで、インフレ鈍化傾向は続いている。
- 住居費を除く消費者物価は既にデフレの傾向が続いている。住居費はまだやや高いが今後は鈍化が進むはず
インフレ鈍化が進むアメリカ
7月の消費者物価は予想よりもわずかに下回る物価の伸びになりました。
- 消費者物価:前年比+3.2%(予想+3.3%)
- 消費者物価コア:前年比+4.7%(予想+4.8%)
アメリカはインフレ鈍化が続いているという認識で良いと思います。下のグラフを見ても、消費者物価もコア指数(エネルギーと食料を除いた物価指数)もどちらもインフレは鈍化のトレンドが続いています。
一部のニュースでは「約1年ぶりに消費者物価が上昇に転じた」という話も書かれていますが、上のグラフの消費者物価のグラフ(青線)を見てみるとかなりわずかな上昇なので、この小反発はあまり気にしなくて良さそうです。
最近3ヶ月の変化(下図)で見ても、インフレが鈍化しているトレンドに変化はないので、インフレ再燃はまだ心配しなくて良さそうです。
アメリカの消費者物価を押し上げている住居費について
アメリカのインフレを押し上げていた住居費が、今後は価格の伸びが鈍化すると言う話を先日しました。
サンフランシスコ連銀の分析では、以下のように住居費の伸びは2024年にかけて大きく低下すると見られています。
しかし、実は今回の7月の消費者物価は住居費の鈍化はそれほど大きく見られませんでした。前月比の年率では5.4%で、まだまだ全体のインフレ率を押し上げる存在となってしまっています。
願わくば、住居費の大きな下落がそろそろ見たいと思っていたのですが、それはまた今後に持ち越されることになりました。
住居費さえ伸びが収まれば、アメリカの消費者物価はいよいよ大きく鈍化するはずです。下図は、もしも住居費を除いた場合の消費者物価を描いたものですが、前年比1.0%と低インフレの状況になっています。
これからサンフランシスコ連銀の予想通りに住居費の伸びが大きく鈍化するなら、アメリカの住居費は「住居費を除く消費者物価」に近づくはずです。
住居費の伸びが2024年にどこまで下がるかによりますが、このままなら2024年のアメリカの消費者物価は1%台の低インフレになる恐れもあります。
9月は利上げなしか
また、今回の消費者物価の発表を受けて、9月FOMCの金利予想は「利上げなし」の確率が上昇しました。
もしも、インフレ再燃が懸念されるようなら利上げ確率が上がっていたはずなので、市場の投資家も今回の消費者物価はインフレ鈍化が進んだと考えたもようです。
というわけで、7月の消費者物価のデータは前月に引き続きインフレ鈍化に大きく前進したと思います。住居費の伸びがまだ高いのが気になりますが、今後それが収まればアメリカの消費者物価はいよいよ2%台(場合によってはそれを下回る低インフレ)に向かうはずです。