7月の雇用統計が発表されました。
失業率は低下し、賃金上昇率も上昇するなどまだ雇用が強い一面ものぞかせましたが、それよりも7月の雇用者数は増加ペースが大きく鈍化をして雇用は弱まっていることが私は気になりました。
そして、市場の投資家も雇用統計のデータを見ながら、雇用が弱まっているという判断をしたように見えます。
この記事のポイント
- 2023年7月のアメリカ雇用統計では、雇用数増加ペースが落ちたことが確認できた。
- レジャー・ホスピタリティ関連の雇用の増え方は大きく低下している。コロナ後の雇用回復は落ち着いたことがわかった。
- 失業率は低下して景気後退はまだ遠く、平均時給も伸びてインフレも完全に沈静化していないが、アメリカの雇用は少しずつ弱まっていることをデータは示している。
コロナ後の雇用回復は静まった
毎回投資家からの注目をあつめるアメリカ雇用統計の発表が今月もありました。
7月の雇用統計は強弱まちまちなものになりました。
- 非農業部門雇用者数:18.7万人(予想19.9万人)
- 失業率:3.5%(予想3.6%)
- 平均時給:前月比0.4%(予想0.3%)
この中で(景気後退はまだ先を意味する)失業率が低下、(インフレがまだ完全には収まっていないことを意味する)平均時給の伸びも2つも確かに重要だと思います。
しかし、どの要素が一番インパクトがあったかといえば、雇用者数の増加ペースの鈍化だったと思います。
雇用の増加ペースは20万人を下回り、ようやくコロナからの急激な雇用回復が落ち着いてきた印象があります。
少し遠い記憶を掘り返してみると、コロナ前のアメリカでは「雇用者の伸びが20万人を上回っていると景気は好調」という判断があった気がします。
2020年の新型コロナ流行初期で大量に失業者が出た反動で今までのアメリカは雇用が大きく回復していました。しかし、回復も一段落してこれでようやくコロナ前の状態に戻ってきたのかもしれません。
コロナ後の雇用急回復の終わりを象徴するのは、レジャー・ホスピタリティの雇用増加数の動きです。今ではすでに雇用増加の勢いはありません。
市場は雇用数の伸びの鈍化に大きく反応
ちなみに、市場の投資家にとっても一番インパクトが大きかったデータは「失業者率の低下」でも「平均時給の伸び加速」でもなく、「雇用者数の伸び鈍化」だったようです。
もし、失業率の低下や平均時給の加速に反応しているなら、アメリカの景気が強い事になり米国債が売られて利回りは上昇していたはずですが、この日の米国債は大きく買われて利回りは低下しました。
米国債が買われるのは景気の減速を心配するときで、雇用者数の鈍化に反応したものと思われます。
もちろん、この日の米国債は過去数日売られすぎたことによる単なる反動で買われたのかもしれませんが、そうだったとしても「失業者率の低下」でも「平均時給の伸び加速」はそれほど重要視されなかったことには変わりません。
というわけで、最後に7月の雇用統計から見えたことをまとめておきます。
失業率が低下したことでアメリカの景気後退はまだ先だということがわかり、また平均時給も予想以上でインフレ圧力もまだ残っていることは間違いありません。
しかし、雇用の増加は明らかなペースの鈍化が見られます。これは「アメリカの雇用はまだ強い」という見方に少しの変化を与える材料になりそうです。