昨日のブログで、消費者物価指数(の中の住居関連の項目)は他の経済指標よりも遅れて動くという話をしました。
この数年で多くの投資家が再認識したように、消費者物価指数はタイムリーなデータではありません。
なので、「遅延なくアメリカのインフレ率を知りたい」という投資家の要望も出てきます。そして、その要望を叶えてくれるデータも世の中には存在するようです。
この記事のポイント
- アメリカ政府が発表する消費者物価指数は、「住居費」のように実情に遅れて反応する項目が存在する。
- そうした遅れを取りぞいてタイムリーにアメリカのインフレを推計しているサイトにTruflationがある。
- 現時点でアメリカはインフレ鈍化の道を順調に進んでいるが、インフレ再燃などをいち早く察知するのに使えそう。
Truflationについて
アメリカ政府が発表している消費者物価指数で集計している品目の中には、住居費のように半年から1年くらい遅れて価格の上昇や下落が起こるものがあります。
いち早く現状と今後の見通しを理解して資金を動かしたい投資家にとっては、経済指標のデータが遅れて反応するのは嬉しいことではありません。
それなら、「もっと実情に合わせて、すぐに反映してくれるインフレ指標があればいいのに」という投資家の要望が出てきます。
そう思って探してみると、世の中には消費者物価指数よりもタイムリーなインフレ指標を作って公開してくれている人たちもいます。
その一つがTuruflationです。
このサイトを訪れると、わかりやすく7月11日現在のアメリカ消費者物価指数(CPI)の推計値を出してくれます。
Truflationのインフレ率が低い理由
上の図を見て、「いやいや。今の時点で最新(23年5月)のアメリカの消費者物価は4%なのに、インフレ率2.45%なんて低すぎる」と思われるかもしれません。
Truflationのインフレ率が低く算出されている根拠はおそらく、家賃などの住居関連のデータの扱いだと思います。
そもそも、住居費を除けば政府発表のアメリカの消費者物価でもすでに前年比2.1%まで低下しています。
また、政府発表の消費者物価では家賃の価格の変化が実際よりも大きく遅れる傾向があるのですが、一方でTruflationが家賃のデータに使っているZillow家賃指数(ZORI)はすでに大きく鈍化をしているために、Truflationのインフレ率が低く計算されていると思われます。
しかし、いずれ政府の消費者物価で住居費が下がるなら、Truflationの数字に追随するかもしれません。
Truflationの使い道
Truflationのインフレ率を見ることで、今のところアメリカは2%のインフレに向かって順調に推移しているように見えます。
今後、Truflationを見るポイントですが、おそらく次の3つの観点があると思います。
- (1)2%にまで下がるかどうか。
- (2)むしろ2%を超えて大きく下がりすぎてしまわないかどうか。
- (3)再びインフレ率が上昇して、インフレ再燃しないかどうか。
まず見るべきは2%に向かってインフレが順調に下がっているかどうかです。今のところ、航路は順調に見えます。この状況なら株も買われる理由になります。
むしろ、住居費を除けばまもなく消費者物価が2%に達するのにFRBは2023年内に2回の利上げをすると発言していることから、引き締めすぎてしばらく2%を大きく下回るのではないかと心配なくらいです。低インフレに陥った場合には、デフレに強い国債が有利になるはずです。
また、今後もしも金融政策が緩和的に転換した場合には、インフレ再燃が起こっていないかもTruflationで確認することができるかもしれません。インフレ再上昇の場合でも、政府発表の消費者物価よりも反応が早いのは役に立ちます。そして、この場合は石油株やコモディティへの投資が有利になるはずです。