アメリカでは6月の雇用統計の発表が終わって、次は消費者物価に関心が移っています。
アメリカの物価については、2023年内なら鈍化傾向が続くだろうと私は思ってます。
先日、ニューヨーク連銀が発表したインフレ基調のデータも緩やかながら、インフレ鈍化の傾向が続いていることを示しているので、それを見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- ニューヨーク連銀はPCEのデータからインフレ基調(MCT)を算出して公開しはじめた。
- MCTが正しいなら、2023年のアメリカは順調にインフレ鈍化している模様。
- MCTが示すようにインフレ鈍化が進むなら、金融引き締めの終わりが近づく。
ニューヨーク連銀のインフレ基調
ニューヨーク連銀はPCEデフレータというインフレ指標を使ってインフレ基調(多変量コアトレンド:MCT)を算出して公開しています。
このMCTを眺めていると、アメリカのインフレ(具体的にはPCEコア)が低下傾向にあるのかが見えてきます。
今月からMCTの公開が毎月定例化されてたようなので、先日発表された5月のPCEの結果を受けて、どのようなインフレのトレンドが見られるのか覗いてみたいと思います。
上の図で、灰色の先はPCEコアが表示されています。FRBが前年比+2%にしたいと思っているインフレデータの一つです。
最新の5月までのデータを見ていると、最近のPCEコアは前年比+4.5%付近で高止まりしていて、2%に引き下げるためにはまだまだ金融引き締めが必要だと思われています。
しかし、上のグラフでMCT(青色線)を見ると、インフレに対する見方は少し変わるかもしれません。
MCTはPCEコアのインフレ基調(ベースライン)を示すものですが、2023年から低下が見られて5月時点では3.5%にとどまっています。こちらも2%に向けて、一層のインフレ鈍化が必要ではありますが、PCEコア指数よりは目標にだいぶ近づいている気配があります。
2023年になってもPCEコアの伸びが鈍化しないことを理由にアメリカのインフレ長期化を不安視する意見もありますが、ニューヨーク連銀のこの分析結果を見ると、インフレ鈍化に向けて進展はしているようです。
まとめ
この記事では、ニューヨーク連銀が新しく今月から定期公開をはじめたインフレ基調(MCT)について書いていきました。
今のアメリカは消費者物価指数でもPCEデフレータでも、エネルギーや食料品を除いたコア指数ではまだインフレが根強いという印象を多くの投資家に持たれています。
しかし、ニューヨーク連銀の分析によれば、まだまだインフレは鈍化させなければならないものの、コア指数でも進展は見られるようです。
今週水曜日にはアメリカの消費者物価の発表があります。前月までのコア指数の伸びを見ていると5%台で高止まりしそうな雰囲気はありますが、インフレ基調(MCT)が示すようなハッキリとわかるインフレの鈍化をそろそろ見たいところです。
コア(特にPCEコア)でインフレの鈍化さえ見られれば、金融引き締めの時期は早まり、そうなれば株にも国債にもプラスに働くはずです。