アメリカはまだ強い雇用と個人消費、それに踏みとどまるサービス業によって支えられています。
しかし、それ以外を見るとリセッション(景気後退)の兆候はいたるところで見られます。ここでは、銀行の貸出額にもリセッションの兆候が見られるという話をしていきます。
この記事のポイント
- 最近では銀行の破綻の連鎖は止まったが、アメリカで銀行からの貸出額の伸びは急速に鈍化している。
- 過去に銀行から貸出額の伸びが急速に鈍化した後には、リセッションが起こっていた。
銀行の危機はまだ去っていない
3月にアメリカでいくつかの銀行が破綻してから、すでに3ヶ月が経ちました。
今ではアメリカの銀行についてほとんど誰も話題にしなくなりました。しかし、目立った動きがないので話題にしないだけで、投資家は誰も問題は解決したとは思っていないようです。
その証拠に、銀行株ETFの株価は3月の下落前に比べて20%も低いところでさまよっています。
この数ヶ月で銀行の破綻の連鎖が止まったのは、FRBの銀行支援策がちゃんと機能しているからのようで、もしもこの支援策がなければ今も銀行は現金不足に苦しんでいたかもしれません。
次のグラフはFRBの支援策(BTFP)でFRBが銀行に貸し出した金額の推移ですが、今もまだ増え続けています。
この3ヶ月で銀行の破綻の連鎖は止まったものの、銀行は今も支援策が必要な状況は続いているようです。
銀行からの貸し出しは伸びが急速に鈍化
「FRBの支援策で破綻が止まったのなら良いじゃないか」と考えるのは、楽観的かもしれません。
銀行が資金の確保に動いているような状況では、企業や個人への貸し出しは伸びないようで、銀行の貸出額の伸びが急速に鈍化している傾向が見られます。
通常、このような貸出額の急速な鈍化はリセッションの前やリセッション期間中に見られます。今回はすでに貸出額の急速な鈍化がはじまったようで、アメリカのリセッションが近づいているのを感じます。
貸出縮小からリセッションまでの流れ
銀行からの貸出が伸びなくなれば、企業は新たな設備投資を控えるようになって景気が鈍化します。そして、さらに景気の鈍化が進むと人員削減が行われて失業者が増え、最後にはリセッションにいたります。
現時点のアメリカではすでに設備投資はかなり冷え込んでいるようです。(下図)。
また、失業者については増加をはじめた段階だと思います。
過去のリセッションでは新規失業保険申請件数が35万件くらいにまで上がっていることを踏まえると、リセッションにまではまだ半年くらいはかかりそうですが(下図)、少しずつ景気は悪化に向かっているように見えます。