1月のアメリカの求人件数が発表になりました。
他の経済指標に比べると求人件数のデータは発表が遅いので、他のデータが2月分を発表している今、ようやく1月分のデータが出てきたことになります。
今月の求人件数の発表を見てみると、今月もまた予想を上回るなどアメリカでは人手不足が解消していないようです。
「それじゃあ、当分インフレは収まらないのかな」と結論づけるのはまだ早いです。細かく見ると、アメリカの強い雇用にも陰りの兆候は見え始めたように思います。
この記事のポイント
- 1月の求人件数は前月よりは減少したが、エコノミストの予想を上回って高水準な状態が続いている。
- ただし、建設業界は大幅に求人が低下するなどの雇用の弱まりの兆しも見られる。
- また退職率も低下が続いている。有利な条件をもとめて転職する人が少なくなっており、雇用は冷えはじめている兆候が見られる。
アメリカの求人数は予想を上回る
さっそくですが、1月の求人件数の結果を見ていきます。
- 予想:1055万件
- 結果:1082万件
- 前月:1101万件から1123万件へ上方修正
1月の求人件数は1月より減りましたが、予想を上回ってまだまだ求人はかなり多いです。
どれだけ多いかはコロナ前の水準と比べると分かるかも知れません。下の図で近年の毎月のアメリカの求人数をグラフにしましたが、コロナ前をかなり上回っている状態は続いています。
「まだ雇用は強いのか」「雇用が強いならインフレも長続きして政策金利も上がるのか」「金利が上がるなら、まだ株も国債も下がるな」と頭をよぎりましたが、今月の求人データには少しだけ変化の兆しも見られます。
まだ特定の業界に限った話ですが、求人数が急減したものが1つあります。
急減速した建設業界の求人数
もったいぶらすに結論を話すと、1月に建設業界の求人数が急減速を見せています。
グラフを見たほうが早いと思うので、こちらをご覧ください。
去年から何度か建設業界の求人が減ることはありましたが、1月のように半減するまで減ったのは初めてです。1月の建設業界の求人数は、コロナ前の水準を下回るほどです。
建設業界は、2022年から上昇している住宅ローン金利の影響を受けていると思われます。また、この住宅ローン金利の高止まりはまだまだ続いているので、これからこの建設業界の雇用はまだ弱くなる余地があると思っています。
アメリカの全業種トータルでは1月も求人数がかなり多かったようなのですが、建設業界に関して言えば既に2021年や2022年前半まで見られた求人の強さは既にないようです。
もちろん、建設業界で24万件分の求人が減ったところで、アメリカ全体の1000万人の求人を冷やすには全く規模が足りませんが、強かったアメリカの求人にほころびは見られていると思われます。
また、もう一つだけ雇用の弱まる気配として、アメリカ全体で退職をする人の割合が減っていることがあげられます。良い待遇や賃金を求めて転職する人が減っているところを見ると、雇用は少しずつですが冷やされていると感じます。
全体的にはアメリカの雇用はまだかなり強い状態にあることは間違いないのですが、細かく見ると小さなほころびも見られた1月の求人数となりました。